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[ 2012-07 -29 23:56 ]
主人公の桑田義雄は、同事件と同様の強姦殺人事件において、加害者の少年たちを検察庁に逆送致していた。そこに、実名報道に踏み切った「週刊文潮」記者・久里が接触してくる。
逆送致に踏み切った判事なら好意的なコメントがもらえるはず。。。という久里の甘い読みは外れ、桑田から思わぬ反駁を受けることになる。
桑田義雄:
「何のために、誰のために…………実名報道をするんでしょうか?」
久里:
「そ、そりゃあ……被害者のことを考えると……、それに社会的意義も…」
桑田:
「実名報道をしたって、被害者は救われないでしょう…………
加害者の側は本人だけでなく、その家族も罪人のように眺められる……」
久里:
「でもあの場合、少年の親にも責任はあるでしょう」
桑田:
「だからと言って、親や兄弟、親戚が社会的に抹殺されていいんですか。
つながりのある誰かが罪を犯せば、
そういう人達も苦しみを受けて仕方ないのでしょうか。」
久里:
「しかし……
小さな子供たちのやったことではない。
分別あって当然の人間が、やったことなんですよ。」
(ここでテレビ画面に切り替わる)
テレビに出演していた「週刊文潮」編集長:
「加害者の人権が大事だと、被害者の親御さんの前で言えるのでしょうか。
それに……婦女暴行ができる人間は、少年と呼べないんじゃないでしょうか。
だから我々は彼らを大人として扱い、実名報道に踏み切りました……」
(ここで再び花壇の前の2人に)
桑田:
「私は大人の場合だって、実名報道は間違いだと思います。
彼らはまだ被疑者ですよ。」
久里:
「そ……それじゃ世論は許しませんよ。」
桑田:
「もし冤罪と分かったら、マスコミはどうします?
あわてて警察や検察庁を批判しても、取り返しがつかないんですよ……」
久里:
「………………」
(再びテレビ画面)
編集長:
「私は、理想を追っているわけではありません。
実名報道で、似たような予備軍を阻止できるかもしれない。
たとえジャーナリズムにその資格はなくても、
現実的な効果があると思います。」
インタビュアー:
「法が手ぬるいからマスコミがやるわけですね?」
編集長:
「………そう言っていいと思います。」
(また花壇の前の2人に戻る)
久里:
「あいつら、随分むごいこと、をやったんですよ。だから……」
桑田:
「だから?」
久里:
「つ……つまり……」
桑田:
「マスコミが天罰を下すんですか?」
久里:
「……………」
(マンガ「家栽の人」第3巻「ユリ」より 毛利甚八・魚戸おさむ/小学館)
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