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ライブドア事件で問われるリテラシーとは?

 今回の記事で、ライブドア事件をいったんまとめておきたい。

 結局のところ、今回の事件の教訓というのは、私たちの「リテラシー」に尽きる。
 それは、堀江貴文という存在をどう評価するということについて定見のないメディアの右往左往、はしゃぎ方とけなし方に端的に表れている。
 メディアは思い出しているだろうか?フジテレビ会長の日枝が去年、ライブドアがニッポン放送の株式を大量に取得した際、「テレビの公共性」と発言した。あの言葉に、どれだけ多くの国民がシラけたか、ということをだ。

 また、そこから距離を置いて眺めているはずの私たちの、堀江貴文に対する評価も割れている。無論、様々な見方があっていいとは思うが、ここで深刻な事実を指摘しておきたい。それは、彼を擁護するにせよ、批判するにせよ、説得力を持って評論する数の圧倒的な少なさである。その証拠に、彼を批判する人々は、彼がいったいいかなる「罪」に問われるべきかについて、だれもその具体的罪状を列挙できていない。擁護する側は、「破壊者」「風雲児」という言葉を用いはするが、抽象的でやはり具体性がない。

 ライブドアに検察の捜索が入ったとき、六本木ヒルズを訪れた多くの人々はケータイで写真を撮り、ブログにアップした。それ自体は何ら悪いことではない。だが、結局のところそうした人々は、ケータイのファインダー越しにしか現実を把握していないのではないか。「ネットの自由」を謳歌しているはずの日本人の思考がいかに「不自由」なのかを象徴的に示してはいないか?

 情報を「主体的」に受け止めることの大切さ、を今一度訴えたい。
 当ブログでしばしば引用させていただくブログ「ふぉーりん・あとにーの憂鬱」作者・47th氏は、こうした事件に接するたび、「自分が代理人だったらどう行動するか」ということを考えるという。つまり、情報を主体的に受け止めるということはそういう努力のことであり、その積み重ねが「いざ」ライブドア事件が勃発したときに活かされるということなのである。

 そして、そうした努力はチンケな愛国主義的「教育基本法」改正などでは、決して教えられることはないだろう、ということも今一度、念を押しておく。

 
# by foresight1974 | 2006-01-29 23:16 | 正義の手続を考える

堀江貴文「逮捕」は必要だったのか!?

 私が大学時代、刑事訴訟法の講義で最も驚いた教えがある。
 それは、「取調目的で逮捕することは違法」ということだった。現実社会では、逮捕された被疑者が自供したかどうかがいつも問題にされているだけに、最初にこれを教わったときは、また法の理想と現実が乖離している事実に嘆息したものである。

 そして今、堀江貴文逮捕の報に接して、改めてこの疑問を投げかけてみたいと思う。

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# by foresight1974 | 2006-01-25 00:25 | 正義の手続を考える

ライブドア強制捜査(2)「堀江貴文逮捕は「本件」にあらず」

 1週間という異例の電撃戦だった。
 ライブドア強制捜査は、先ほど社長の堀江貴文が逮捕されることで、新たな段階に入った。通常、こうした経済事件の逮捕は実務担当者(課長クラス)の逮捕で人的証拠(供述証拠)を確保した後、経営トップを逮捕するという手順を踏むが、いきなり経営トップを逮捕する捜査手法は、改めてこの事件がある種の「異常さ」を抱えていることが浮き彫りとなった。

 さて、話をもとに戻そう。
 ライブドア強制捜査が「別件」か「本件」かについて、47th氏から貴重なご指摘を頂いた。これに関連して、今月号(2006年2月号)の「Foresight」に掲載されたレポート「東京地検が探したライブドア「脱法」の鍵穴」をご紹介したい。
 47th氏は、今回の強制捜査を「本件」とお考えのようだが、私はそうは考えてはいない。というよりは、この事件が法律上の「本件」か「別件」かを考えることは本質的ではない。重要なことは、今回の強制捜査の「別件性」なのである。

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# by foresight1974 | 2006-01-23 20:56 | 正義の手続を考える

ライブドア強制捜査を問いなおす

 ライブドア強制捜査に対して、堀江の対応に疑問を持っていた。
 通常、こうした企業不祥事に対して強制捜査が入ると、経営側は「不正の存在は認めるが、組織の責任は回避する」という姿勢に終始することが多い。つまり、あくまで一個人の「行き過ぎ」であって「組織的犯罪」ではないことを強調するのだ。日本のサラリーマン社会の現実と真逆の、しかしながらとっても日本的な謝罪の姿勢は、不祥事の打撃を最小限に食い止めようという猿知恵である。
 それに対し、堀江は特捜部の捜査が入ってなお「不正の存在」を認めていない。正直なところ、ライブドア・フジテレビ問題のように、カラ元気から出たものか、はてまたクールな計算から出たものか掴みかねていた。

 それが、47th氏のブログ「ふぉーりん・あとにーの憂鬱」を拝見して疑問が解けた。単体決算と連結決算の差異、そして今回の強制捜査の手続保障の見地から疑問を投げかけたこの記事は、ライブドアにも法的論争として争う余地があることを示唆している。
(それが絶望的な試みだとしても)

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# by foresight1974 | 2006-01-20 22:00 | 正義の手続を考える

ライブドア強制捜査「この3日間で得をした者」

 ライブドアに対する強制捜査の影響は、日本社会に大きなインパクトを与えそうであるが、この3日間で得をした者を考えてみたい。

 1人目は、耐震偽装事件のキーマンであるヒューザー社長・小嶋の証人喚問の「直撃」をもらうはずだった、安倍晋三であろう。偽装の公表を遅らせたかどうかは藪の中だし、実際に一日に何人もの陳情者を相手にする立場としては、小嶋の「請託」をどれほど真剣に斟酌したは疑問である。が、世間の目をいくばくかでも減じる効果はあったはずだ。
 2人目は、自民党衆議院議員の松本和巳である。選挙違反事件で選対幹部の有罪が確定した今日、ひっそりと議員を辞職した。すでにヤフートップページのニュース欄にも名前はない。おかげで、自民党は衆議院千葉7区の補欠選挙への影響を回避できそうである。
 3(人)目は、ライブドアへの強制捜査で体よく「提携解消」の口実をもらったフジテレビではないだろうか。持株の損失はかなりの額に上るだろうが、それでも、今後「ネットとテレビの融合」に関して再びフリーハンドになることは大きい。

 他にもいるかも知れない。が、肝心なことは、一見「損」をしているように見えても、実質的にはこの事態をうまく活用して、まんまと「得」をしている人物は必ずいるということである。
 いずれ時が証明することになるだろう。その時のために、今日は「彼ら」がどのように見られていたかということについてきちんと記録しておくべきである。

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# by foresight1974 | 2006-01-18 21:06 | サイレント政治・社会評論

真理を決定するものは、真理それ自体であり、それは歴史を通して、すなわち人類の長い経験を通して証明せられる。(藤林益三)


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