NHKドラマ「ハゲタカ」補論(1)「西野昭平はなぜプライドを捨てられなかったのか?」

※2月に放送されたNHKドラマ「ハゲタカ」の再放送に合わせて再編集しました。

 今日取り上げるのはNHK土曜ドラマ「ハゲタカ」で、悲劇的な最期を遂げた西乃屋旅館経営者・西野昭平だ。
 苦悩する旅館経営者を壮絶に演じきった人物が、宇崎竜堂だと気がつかなかった人も多いのではないだろうか?音楽通の妻も、言われて初めて気がついてびっくりのけぞっていたのには痛快であった。
 ところで、不良債権として売り飛ばされ、何もかもを奪われてしまった西野は、なぜ最期まで「プライド」を捨てられなかったのだろうか?
 その答えは、不動産担保を中心とした貸し出しシステムと、連帯保証人制度である。



 通常、こうした中小企業の経営者は、代表取締役に就任する際、自宅などの私財を担保として提供している場合が非常に多い。司法試験レベルでは、株式会社は有限責任と決まっているが、現実の経営者は事実上、無限責任である。
 そして、彼ら中小企業の経営者が守らなければならないプライドのもう一つが、周囲への「迷惑」である。
 経営に行き詰った経営者には、周囲に頼んで金策した者が多い。中には、運転資金などを追加融資してもらうために、親族や知人に連帯保証を頼んでいる場合もある。もし、経営者が借金返済が滞った場合、銀行や投資ファンドは容赦なく「剥がし」にかかる。
 西野はプライドを守らなければ、責任は周囲に無限連鎖のように広がっていくのだ。「西乃屋の伝統」以外に、彼には守らなければならない責任が重くのしかかっていたのである。
 ドラマで象徴的なシーンがある、大森南明演じる鷲津が西野に問いかける。
 「あなたが許せないのは、自分自身ではありませんか?」 
 そして、そのような苦境に西野を追い込むシステムを生み出したのは、ドラマでは柴田恭兵が柴野を演じていた「いいひと」―芝野ら、メガバンクのエリート達である。そして、そのメガバンクを、バブル時代に過剰貸し出しを強力に指導した大蔵エリート達が、今度は手のひらを返したように追い込んでいたのである。

 ドラマでは、ここまで綿密に描かれてはいない。
 が、上記のような知識があれば、西野の苦悩をより深く理解できるだろうし、この国の金融システムが何ら根本的に解決されていないことを知っていただけると思う。
 メガバンクは今期、史上最高の利益を計上すると予想されている。しかし、不動産担保を中心とした貸し出しシステムも、苛烈な取立ての元凶である連帯保証制度も、未だに手を付けられていない。

※公式HPより―ハゲタカ経済キーワード「バルクセール」
by foresight1974 | 2007-08-19 23:15 | 書評・鑑賞

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