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梅田望夫「シリコンバレーからの手紙 116」レビュー

 今日は、「ウェブ進化論」でおなじみ、梅田望夫の連載コラム「シリコンバレーからの手紙 116 ―制度設計側が是正すべき一般投資家のリスク過重―」(Foresight2006年5月号・新潮社)をご紹介したい。

 梅田は、このコラムで重要な指摘をしている。
 それは、日本で「失敗しなくても返さなくていいお金」で企業冒険できる世界が日本で広がったことを喜びつつも、一面で日本の制度設計の行き過ぎだというのである。

 90年代末の米ネットバブル期の異常値を除き、米ナスダックの株式公開基準の感覚は「売上高が数十億円以上、利益有、売上高成長率50%以上」と覚えておけばいい。一方、今の日本は「売上高数億円程度、利益有、属しているセクターが有望」なら株式公開できてしまい、セクターがネット関連だと公開後に信じられないほどの高値がついてしまう。


 この結果として、梅田は「仕組み全体の関係者が取るリスクと得るリターンのバランスが、株式公開前の関係者にやさしく、株式公開後の関係者に厳しくデザインされ過ぎている」と述べている。
 その例として、ドリコムの例を挙げたのは適切であろう。つまり、株式公開にあたっては緩やかに審査され、上場がしやすいものの、株式公開後の異常な時価総額の膨張により、公開企業が適正な株価形成への誘導を難しくしている面があるのだ。公開後の多くの企業が、上場後に積極的な買収戦略へ傾倒してしまう背景だ。時価総額の毀損による株価暴落を防ぐため、いかがわしいマンション販売会社や中古車販売会社を買収したライブドアにも一脈通じている。

 ライブドア問題が刑事事件に発展したとき、株の暴落で損害を受けた株主たちがクローズアップされた。メディア報道の「同情的」見解とは裏腹に、ネット世界では株主達の悲惨な境遇を嘲笑・冷笑する空気が広がっていた。
 一面では正しい。正直、去年の今頃、ライブドアが権力を敵に回して大立ち回りを演じていた時点で、この株に一般投資家は手を出すべきではなくなっていた。社会的に非力な庶民がハンドリングできる状況ではなくなっていたからである。
 だが、それとは別に正されるべきは正されなければならない。法を破り、投資家に損害を与える企業をすみやかに退場させる一方、そのような企業が安易に株式を公開できなくするよう、厳格な規制も必要になるだろう。

 「売上高を数億円規模から数十億円規模へと伸ばす期間」とは、ベンチャーが「まだどうなるかわからない危なかっしい存在」から「真の公開企業」へ脱皮するための最大の難所である。
 今の日本の仕組みの最大の問題は、株式公開前の関係者が「早すぎる公開」によって先にハイリターンを確定してしまい、「最大の難所」に乗り切るリスクを公開以降に投資した一般投資家に負わせているところにある。


 この指摘も、堀江が逮捕前にすでに自己株式を売却して「一生遊んで暮らせる金」を手にし、逮捕後は東京地検特捜部を辞めた弁護士を中心とした金のかかる弁護団を組織している事実を見ても納得が行くだろう。

 ライブドア問題について、「ネットバブルに煽られた劇場型犯罪」的要素と、それにまつわる人間悲喜劇ばかりが取り上げられてきた。

 そろそろ、本質に迫る議論が必要である。
by foresight1974 | 2006-05-01 00:19 | 企業統治の公共精神

真理を決定するものは、真理それ自体であり、それは歴史を通して、すなわち人類の長い経験を通して証明せられる。(藤林益三)


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