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尼崎脱線事故・誰が「責任」を取るべきか

 原型を留めないほど押し潰された列車に集まる救急隊員たちを写した、上空ヘリからの画像―
 知人に巻き込まれた人がいない筆者でも、あの生々しい光景を昨日のことのように思い出すことが出来る。

 尼崎脱線事故から1年。
 誰一人法的責任を問われることがなく経過した昨日、事件の本質を突く動きがあった。

 共同通信が配信した「日勤教育で苦痛」と提訴 JR西運転士らというニュースだ。



 鉄道、鉄鋼、自動車、造船。。。日本経済の屋台骨を支えた巨大産業にとって、労働組合は桎梏である。ストライキによる経営への打撃だけではなく、左翼政治勢力の組織基盤としての労働組合は、経営者―資本家の側からすれば「敵」以外の何者でもない。

 旧国鉄の民営化に抗した国労、動労といった労働組合対策は、当時のイデオロギー闘争が混ざりこんで複雑な政治的濁流を生み出した。

 民営化したJRにとって、組合解体は民営化を成功させるための必須事項だった。
 中央労働委員会の審決にさえ抗して、JRが「労働組合解体」を押し進めることが出来た背景には、世論も後押しもあった。運賃が値上げされるばかりで赤字が垂れ流され、何らの経営努力を払わない国鉄の体質に対する批判が高まり、労働組合はその元凶とみなされたのである。

 山陽新幹線を擁しながら、地方に赤字ローカル線を抱えるJR西日本で、その組合解体は苛烈を極めた。
 日勤「教育」という名の下、強要された膨大な反省文の量や、警察の取調室のような過酷な審問によって、何人もの運転手が自らその命を断った。

 遺族のうちの何人かは、こうした非道な労務管理に対し、訴訟に訴えて真実を明らかにしようと試みた。
 しかし、目撃者も少なく、自殺との因果関係の立証が困難な日勤教育訴訟は難航を極めた。すでに出ている判決も見解が大きく分かれている。

 また、失われた10年の中で進行した職場環境の悪化の中を誰もが共有しながら、世論はこうした問題に冷淡だった。
 背景には、保守論壇から向けられた「労働組合=サヨク」という短絡的な批判とそれに悪乗りする「2ちゃんねる的ネチズン」たちの跋扈がある。「サヨク」を脊髄反射的に冷笑する彼らには労働組合が政治運動の陰で果たしてきた「健全な役割」に対する知識も理解も存在しなかった。

 2005年4月25日、全ては起きるべくして起きた。

 事故後、テレビの取材に対しても、「日勤教育に問題はない」と強弁するかつての経営者の姿を見て、この事故の責任は、行き過ぎた組合弾圧を押し進めるため、現場運転手に苛烈な日勤教育を課したJR西日本の歴代経営陣の「責任」であると、私は確信を持った。
 歴代経営陣を「法的」に問うことは非常に難しいだろう。大きな産業事故に関して、経営者の業務上過失責任罪を認めた判例は、「ホテル・ニュージャパン」事件など、ごくわずかな例しか存在しない。

 しかし、真実を省みず自らの責任に頬かむりをする人間の「悪名」は、正しく歴史に書き込まれるべきである。
by foresight1974 | 2006-04-27 21:17 | 働く人々の「権利」を考える

真理を決定するものは、真理それ自体であり、それは歴史を通して、すなわち人類の長い経験を通して証明せられる。(藤林益三)


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