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ライブドア・フジテレビ問題とは何だったのか(5)「堀鉱一には荷が重すぎた子会社上場問題の検証」

 別に無理に取り上げるほどのことでもないのだが、分かりやすい素材として今回はドリームインキュベータ社長・堀鉱一の発言を検証しておきたい。

 2月20日テレビ朝日「サンデープロジェクト」に出演した堀は、他の出演者より抜け出て、登場した堀江を激しく攻撃した。しかし、口調の激しさのわりには中身がすっからかんで共感できるポイントがほとんど見当たらない。
 中でも、次の趣旨の発言にはずっこけた。「(堀江のやり方は)アングロ・サクソン的で欧米的な弱肉強食のやり方」(記録を保存していないので、再現は正確ではないことをお断りしておく)
 聞いたとき、思わず耳を疑ったとはこのことだと思った。ボストンコンサルティング時代に年収2億円だった男の発言とはとても思えなかったからだ。筆者は堀のアングロ・サクソン云々のあり方に焦点を合わせていない。欧米の資本制度、または法律制度をしっかり学んだ者ならば、ライブドアの手法も、フジテレビの手法も「欧米ではありえないやり方」だということにすぐ気が付かなければならないからだ。



 まず、ライブドアの手法から言うと、欧米では時間外での株の大量取得による場合であろうと、基本的にTOBで行わなければならないことになっている。ライブドアの大量取得自体、欧米ではまず起こり得ない。
 次に、フジテレビの手法は後の機会に詳しくお話するが、「ポイズン・ビル」の実行を認められるのはアメリカだけで、「欧米」ではない。また、アメリカの場合も事前に定款などに定めがない場合は無効であるから、フジテレビ・ニッポン放送が取った手法もやはり起こり得ないのである。
 そうした意味で、ライブドア・フジテレビ問題とは法律制度の面から見ると特異な事件である。
 もう一つ-これが今回のブログで一番言いたいことだが-ニッポン放送の株をライブドアが大量に取得すること自体、欧米では絶対にありえない。つまり、事件自体がほとんど起き得ないのである。なぜか。それは、欧米の株式市場ではグループ子会社の上場は厳しく制限されているからである。

 まず、欧米の基準では上場している会社の半分の議決権が親会社に握られていること自体が「ナンセンス」である。上場会社の価値は市場が決め、その会社の経営方針も市場で投資した株主が株主総会で決定することが「自然」だからである。昨年末、NECの子会社がわずか4年で上場廃止になり、市場の反発を買ったことがあった。NECのソフトサービス戦略の再編が理由となったが、親会社のハラ一つで多くの投資家の不利益を被るやり方には批判も出た。
 また、日本の場合子会社の配当性向が一般的に低いことも問題である。子会社の利益が配当に回らず内部留保に回っているということは、その会社の株主は本来受取るべき配当を受取っていないことになる。親会社は連結決算に反映されるので問題はないともいえるが、本来受取るべき配当を受けられない「市場で株を買った」子会社株主は「隠れた損失」を被っているといえる。
 もう一つ、隠れた損失を被っているのは親会社の一般株主たちである。本来、めぐりめぐって自分たちの配当として入ってくるはずのお金が、子会社上場という「資本流出」行為によって入ってこないからである。欧米だったら株主代表訴訟を起こされてしまうような非常事態である。
 日本の子会社上場制度は、重大な歪みを市場に生み出したこともある。2000年、ITバブル華やかなりしときに、NTTグループは東証上場企業の時価総額の4分の1を占めていたときがある。NTTドコモやNTTコミュニケーションズなど、ネットのインフラに関わる企業をたくさん保有し、その多くがいわゆる「値がさ株」であった。つまり、こうした会社の株価がTOPIXや日経平均の動きを大きく左右していたのである。
 そうしたわけで、フジテレビ・ニッポン放送の関係は日本に特有の株式持合いなのであり、その買収は堀が言うような欧米的でもアングロ・サクソン的でもないのである。

 そもそも、なぜニッポン放送はライブドアに狙われるハメになったのか。それは、子会社でありながら親会社の株を大量に保有している資本関係のねじれがあるからである。
 ニッポン放送を狙われた後のフジテレビグループの過剰反応については、前回のブログで少し触れるたが、そもそも狙われたくなければ速やかにニッポン放送を上場廃止にするべきだったのである。ニッポン放送が上場することの資本政策上の意味はほとんどなかったはずである。それを様々な政治的理由から放置し続け、あげく狙われてからの企業防衛の経営判断としてのフジテレビグループの対応はお粗末の一言である。被害者を名乗る資格などない。

 堀は、ライブドア・フジテレビ問題で徹底的にライブドアを批判したが、結局のところ、事件全体を見通すような見識を示すことがほとんどなかった。
 彼ならまあそうだろう、と思う。「朝生」に出ていたときから思っていたが、彼のコメントはあまりに中身がない。バンバン言っていく「ノリ」だけで生きている人間である。
 確かに経歴はすごい。だが、30過ぎたforesight1974は、いわゆる一流企業の中でも口八丁手八丁だけでのし上がる人間がたくさんいることも知っている。まあ、それだけでボストンコンサルティングにも行って、その後立ち上げた会社は一部上場なら確かに「たいしたもの」ではありますが。。。
 でも、彼は所詮「Politician」なのである。
by foresight1974 | 2005-10-23 00:29 | 企業統治の公共精神

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