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ライブドア・フジテレビ問題とは何だったのか(2)「登録番号第4819507号 商標名東京経済新聞」

 さて、準備の方はお済みだろうか。正解を発表しよう。
 IT業界の歴史年表の中にライブドア・フジテレビ問題を書き込むとこのようになる。

1990年・・・IP接続可能なプロバイダーが登場。
1991年・・・HTMLが発明される。また、同年にwwwシステムも開発され、世界中のHP閲覧が理論的に可能となった。
1992年・・・ホワイトハウスがインターネット利用可能になる。
1994年・・・インターネットブラウザNetscapeが発表。また、この年からネット上のショッピングモールが出始める。
1995年・・・世界中でWindows95が爆発的なヒットとなる。また、現在広く普及しているInternet Explorerが発表された。インターネットでラジオ放送が開始される。
1997年・・・ブロードバンドのさきがけとなるADSLの実験をNTTが開始。
1999年・・・インターネット接続人口が全世界で7000万人を突破。
2000年・・・本格的なネットゲーム機能を搭載したプレイステーションが北米や欧米で販売された。この年には中国の携帯電話普及台数が7千万台を突破している。
2001年・・・任天堂やマイクロソフトがプレステに追随してネットゲーム機能を搭載したゲーム機を発売。ネット広告は全世界で100億ドルを突破した。
2002年・・・世界のインターネット人口が5億人にせまる。HDDの容量が20GBを超えるPCが発売されるようになり、自宅PCでTV録画に支障がなくなった。
2003年・・・日本で携帯電話からのインターネット接続利用者が5000万人を突破する一方、国内のブロードバンド人口が1000万人を突破する。電子商取引を利用する世界の人口も3億人を突破。また、ホームページや日記の機能をより発展させた「ブログ」が世界的に流行する。ファイル交換システムによる著作権侵害が社会問題化しはじめる。
2004年・・・世界の携帯電話人口が10億人を突破。アフィリエイトシステムにより、広告収入を得る人々が急増する。ネット上での音楽配信サービスも流行に。世界のネットTVの利用者数は200万人程度と推計される。
2005年・・・ライブドア・フジテレビ問題。この年の世界のネット人口は7億人~8億人と推計されている。国内のブローロバンド人口は2000万人を突破する見込み。

なお、この後の予測もいくつかご紹介しておこう。
2006年・・・国内の全世帯数の半分がブロードバンド接続可能になる。国内ネット広告市場は5600億円に達し、5年前の10倍となる。音楽配信サービス市場も1500億円にせまる。
2007年・・・アメリカではほぼ全ての国民に携帯電話が行き渡っている。国内ではインターネット人口が9000万人に達し、うち3分の2はブロードバンド環境にある。
2008年・・・世界のネットTV利用者数は2600万人、4年前の13倍となる。
2010年・・・国内のブロードバンド・コンテンツ市場は1兆5千億円に達する。音楽配信サービスは4000億円。

 このようにしてみると、堀江が主張した「既存メディアとネットの融合」というのはあながち当てずっぽうではないことが見えてこないだろうか。今まで既存メディアでやってきたことがインターネット上にどんどん移行され、しかもその市場は数年で10数倍などという途方もないスピードで拡大し続けているのである。(もちろん、ライブドアがその優勝劣敗の中で淘汰されないという保証はどこにもないけれど)

 さて、ここでもう一つのコラムをご紹介しよう。阿部のレポートが出た翌月、同じ「Foresight」に掲載された、ミューズ・アソシエイツ社長梅田望夫の「ウェブ社会「本当の大変化」はこれから始まる」というコラムだ。



 ムーアの法則という言葉をご存知だろうか。もともとは、「半導体性能は1年半で2倍になる」という意味だったが、現在では「あらゆるIT関連製品のコストは年率30%~40%で下落していく」という意味に転じている。
 梅田は、IT技術の発達によるムーアの法則が40年続いてきた結果、私たちは「チープ革命」(フォーブス誌コラムニスト:リッチ・カールガード)の状況に到達した。という問題提起を紹介している。

 「チープ革命」という概念には、「ムーアの法則」によって下落し続けるハードウェア価格、リナックスに代表されるオープンソース・ソフトウェア登場によるソフトウェア無料化、ブロードバンド普及による回線コストの大幅下落、グーグルの検索エンジンのような無償サービスの充実といったことがすべて含まれる。
 今年上半期の日本はフジテレビ・ライブドア問題で大騒ぎだったが、事の本質はこの「チープ革命と深く関係している。テレビ局は「映像コンテンツを製作して、それを日本中にあまねく配信する」ために存在しており、そのためには、編集機材から放送設備まで莫大な投資が必要だった。しかし今や「チープ革命」によって、映像コンテンツの製作・配信能力は、皆が持っているパソコンやその周辺機器やインターネットの基本機能の中に組み入れられ、テレビ局だけの特権ではなく誰にも開かれた可能性となった。「ムーアの法則」の恐ろしさとは、そういう可能性がいったん開かれると、それを実現するための道具の価格性能比が年々ものすごい勢いで向上していくことが、誰にも予感できることなのである。
 (中略)
 「チープ革命」以前は、こうした表現行為を行うためには、テレビ局、出版社、映画会社、新聞社といった組織を頂点とするヒエラルキーに所属するか、それらの組織から認められるための正しい道筋を歩むしか方法はなかった。それゆえに既存メディアに権威が生まれたのである。
 しかし、日本だけでも数千万人、世界全体でいえば十億人規模の人々が、某か自らを表現する道具を持ち、その道具が「ムーアの法則」の追い風を受けてさらに進化を続けていくと何が起きるのか。それは、今とは比較にならないほど厖大な量のコンテンツの新規参入という現象である。人口全体に対する表現行為を行う人たちの比率はそう大きくなくても、母集団が数千万とか億という単位になると、コンテンツの需給バランスが一気に崩れる。
(中略)
 フジテレビ・ライブドア問題とは、「チープ革命」がもたらすこれからの「総表現社会」とも言うべき方向性によって、テレビ局に代表される既存メディアが揺らぎはじめた象徴と理解するべきなのだ。
(新潮社「Foresight」2005年月号「ウェブ社会「本当の大変化」はこれから始まる」より)


 梅田が見抜き、前回の記事で取り上げた阿部重夫が見抜けなかった真理はここにある。

 さらに、梅田の主張を補強する事実をもう一つ紹介しよう。題名に掲げた「登録番号:第4819507号 商標名:東京経済新聞」のことである。これは、ライブドア・フジテレビ問題が勃発するちょうど一年前、ライブドアが特許庁に出願した商標である。
 この商標を「発見」した経済ジャーナリスト・吉富有治は、自身のレポートの中で興味深い事実を紹介している。

 たとえ大手全国紙といえども、その商標登録はいたってシンプルなものだ。申請した商標を使う範囲を示す欄を見れば、朝日新聞は「新聞」、日本経済新聞は「新聞紙」、毎日新聞は「印刷物」とだけ記している。やや詳しい読売新聞にしても「新聞記事に関する情報の提供、気象情報の提供、求人情報の提供、オフセット印刷、凸版印刷」と記しているにすぎない。
 だが、ライブドアが申請した「東京経済新聞」の同欄には明らかな違いが見てとれた。冒頭にくるのは「新聞」ではなく「電気通信機械器具、電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体、新聞の記事データを記憶させた記録媒体、ダウンロード可能な電子出版物」。そして、7つある項目の中には「放送番組の制作、テレビジョン放送・有線テレビジョン放送・ラジオ放送・衛星放送・地上波デジタル放送において提供するニュースに関する番組の制作及び配給(以下略)」という記述もあった。
(新潮社「Foresight」2005年4月号「ライブドアの「メディア欲しがり」は終わらない」より)


 ここまででお読みいただけた方にはもはや説明不要であろう。ライブドア・フジテレビ問題は単なるマネーゲームでは断じてない。メディア社会、ネット社会を一変させうるインパクトを持ちえた大事件だったのである。その過程の巧拙はともかく、彼らは本気でそれを目指していることは事実である。
by foresight1974 | 2005-09-24 09:13 | 企業統治の公共精神

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