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Stateman 小倉昌男の死(後編)

 小泉の自称「郵政解散」が起きたその日の午前、小泉純一郎は小倉昌男のお別れ会に出席している。

 国民の皆さんはどうやら小泉純一郎が郵政民営化を目指す改革者だと思っていらっしゃるようだが、まさにその当人が宅急便の雄、ヤマト運輸を潰そうとする張本人なのであるから、皮肉な会というほかない。



 現在、小泉が押し進めようとしている郵政民営化とは、民営化による経済活性化というよりは破綻しかけている郵政事業を救うために、郵政公社を独占事業体のまま民営化して「焼け太り」させようというものである。2006年まで税金を一円も払うことのないこの公社は、ヤマト運輸以外の企業との業務提携を進め、民営化後は物流事業の化け物として市場に君臨することになる。ちなみに、資本関係のうえで完全民営化することはさらに10年後。地域分割もされなければ、信書の独占をやめることもない。郵便法その他の法律で強力に援護された公社は、小倉が20年以上官僚と戦い続けて獲得したものを押しつぶそうとしているのだ。
 小泉純一郎という男は、道路公団民営化問題で露呈したように単なるトリックスターに過ぎない。決定的な場面で指導力を発揮することがないまま、頑迷かつ独善的な意志で、民業を圧迫し国を誤った方向に導きつつある。メディアの利用にやたらとたけたこの政治家は、所詮は単なるPolititian(政治屋)なのである。
 そしてその市場ですら、Eメールが発達する中でユニバーサルサービスの存在意義すらが問われようとしている。ヤマト運輸は近年、郵政公社を相手取り独禁法訴訟を提起しているが、それですら市場の大きな流れの中での「局地戦」になろうとしている。

 小倉だったらどうなっただろうかと夢想してみる。晩年、政府の行政改革審議会委員などをつとめたが、報酬を福祉事業に投じ、自身は賃貸住まいだったという。陰湿な組み合い潰しとも無縁で、労使協調路線をいちはやく確立した懐の深い経営者であった小倉が政治家になったならば、間違いなくStateman(国家の指導者)になっただろう。
 惜しい人が亡くなった。ただそれが今は残念でならない。
by foresight1974 | 2005-09-17 13:40 | 企業統治の公共精神

真理を決定するものは、真理それ自体であり、それは歴史を通して、すなわち人類の長い経験を通して証明せられる。(藤林益三)


by foresight1974