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現状の不幸を追認するだけの「残業時間見直し策」(By foresight1974)

 今日の日経朝刊によれば、厚生労働省は休日や週40時間を超える労働に割増賃金を支払う規制について、適用除外を拡大する方針を固めたという。

 昨年も時短促進法改正問題を取り上げたが、最近、厚生労働省の政策が静かに、しかしながら大きな転換をみせている。方向性としては、「国家が労働者の労働時間を管理する」というものから、「労働者の労働時間を原則自由化して、働き方のスタイルを類型化して規制する」というものに変わりつつある。
 が、これは奇麗事としてまとめた考えである。



 実際のところは、産業界や財界側の要求として、いわゆる「サービス残業」を合法化したい、という思惑から来ているのであろう。
 昨年も大手家電量販店のビックカメラなど、適正な残業代を支払わなかったとして摘発を受けた企業が相次いだ。労働基準監督署も監視を強めている。
 大手の一流上場企業ですらサービス残業は「スネに傷を持つ」身の話である。
 
 理論としては、労働者の労働の質を「労働時間」だけで測ることは、不可能だと考えている。
 だが、一番の問題はそういうことではなく、企業側が労働者の労働の質を適正に評価できない、あるいはする気がないところに問題がある。
 結局のところ、裁量労働制度や成果賃金制度も、実質的な賃金切り下げの「屁理屈」として機能しており、労使慣行の信頼醸成の機能を全く果たしていない。
 このような中で、残業割増賃金の見直しをしたところで、立法政策者の思惑はどうであれ、企業側がトクをしただけという、矮小化した結果になりかねない。
 私自身は、サービス残業なんて絶対にやりたくないが、かといってだらだら仕事して残業代を稼ぎたいとも思っていない。
 残業代を出してくれるならば1分余さず徹底して欲しいし、仕事の成果をきちんと評価してくれるならば、そんなものは1円だっていらない。
 だが、そのような信頼関係は今の日本の労使慣行には存在しない。

 先日、友人とこの話が偶然に話題に上ったが、彼はぼやくように言った。
「まあ、どうせ払わない企業は払わないけどね。」
 残業代をもらう身分の「気分」を実に的確に表した声だった。
by foresight1974 | 2005-04-28 20:00 | 働く人々の「権利」を考える

真理を決定するものは、真理それ自体であり、それは歴史を通して、すなわち人類の長い経験を通して証明せられる。(藤林益三)


by foresight1974