野中ともよとカーリー・フィオリーナの間(By foresight1974)

 別に珍しいことではない。女性が東証一部上場企業のトップになるということについては、いつかはこうなるという時代の流れだとは思っている。
 しかしながら、昨日の三洋電機のCEO交代のニュースには非常な違和感を覚えたのは事実だ。(日本経済新聞より
 各紙報道によれば、案の定というべきか、記者会見では新CEOに対し手厳しい質問が浴びせられた。経済紙記者でなくても、「本来はCEOを選出、監視すべき社外取締役がCEOになるというのはビジネスモラルとして問題ではないのか」「創業家会長(井植敏)からCEOとして指名されたことで、思い切った経営が出来ないのではないか」「本来は経営不振の責任を取るべき現会長が、代表取締役兼取締役会議長として残るというのはおかしいのではないか」という疑問はすぐに思いつくだろう。
 そしてもう一つ、「野中ともよという、ジャーナリスト出身の経営の素人がCEOにふさわしいのか?」という疑問も。
 



 このニュースを聞いてすぐに思い出したことは、先ごろHP(ヒューレット・パッカード)CEOを辞任したカーリー・フィオリーナのことだった。
 フィオリーナは、スタンフォード大学で哲学を専攻していたが、後にメリーランド大学ビジネススクールを卒業。AT&Tやルーセント・テクノロジーの事業会社社長を経てHPのCEOに就任した。いわば経営のプロである。戦闘的な性格で、「アメリカ社会には「ガラスの天井」なんか存在しない」と言い放ったり、HPに招いた創業家との泥沼の闘争に勝利してコンパックとの大型合併を実現するなど積極的な経営が世間の注目を集めていた。

 だが、特筆すべきはその引き際の良さかもしれない。
 こうした強引な手法がたったかHPの業績は一向に改善されず、業界首位のデルとの差は開く一方となった。やがて取締役会との対立が深刻となり、フィオリーナは退任を余儀なくされた。
 メディアの中には事実上の解任と報じたところもあった。おそらくは真実であろう。だが、私はフィオリーナが記者会見に出て、話せる事実を率直に語り、負けを認めて潔く辞任したことを讃えたい。
 会社経営をもっともドラスティックに変えうる方法の一つはトップの交代であることは間違いない。だがこの日本では、フジサンケイグループ議長を解任された後、10年にわたり法廷闘争を繰り広げた鹿内義明をほど派手ではないが、相談役や名誉顧問といった肩書きで「会社にしがみつく」役員がなんと多いことか。
 野中ともよという人物をジャーナリストという視点から評価するならば問題は無い。だが、経営者というのは組織の中に入って、自らも「会社の一員」になるということである。社外取締役のような批評家役で済む話ではない。記者会見では手厳しい質問にも正面から応じていたようではあるが。
 そして、トップと他のサラリーマンと最も大きな差異。つまり、「就任したときから引き際を考える」ということ。そこまでの視点を、ジャーナリストだった野中が持ちえているのだろうか?

 つまり、私が野中ともよに聞きたい質問はこうである。
 「あなたはカーリー・フィオリーナになれますか?」
by foresight1974 | 2005-04-09 13:19 | 企業統治の公共精神

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