時短促進法改正は労働政策の挫折か(By foresight1974)

11月17日の日本経済新聞朝刊によれば(Webで確認出来るのは四国新聞社の記事)、厚生労働省の労働政策審議会の労働条件分科会は、次の通常国会において、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(時短促進法)を改正し、法案で目標とされてきた「総労働時間目標1800時間」を撤廃する方針を打ち出したという。(また、法律名から「時短」の文字を削除するという)



80年代から日本の労働時間は長すぎるとたびたび欧米諸国から指摘され、1992年に施行された。当時の労働時間が1958時間で、2003年度の総労働時間は1853時間に短縮され、効果があったとの見方もある。時短促進法自体は、5年の時限立法であったが、これまで2度の延長が認められた。現在も、一部製造業の労働組合などは時短政策を重視した運動を継続している。
しかし、「時短政策」をめぐる一連の歴史は、実情とつじつま合わせをしようとする経済界とのイタチごっこの歴史であった。その象徴的な例が近年摘発が強化された「サービス残業」問題、「残業代未払い」問題であろう。大消費者金融会社「武富士」会長武井保雄の逮捕・起訴にまで発展した一連の事件の発端は、サービス残業未払い問題の民事訴訟であったことはほとんど知られていない。

別の見方もある。確かに、総労働時間は短縮されているが、不景気による派遣社員やパート社員の増加によるものであるという指摘もある。また、そのために少なくなった正社員に業務が集中し、正社員の比率だけで検証すると、残業が増えた正社員の割合が増えている、という分析もある。実際上、1800時間の労働時間を1日あたりに引きなおすと1日8時間を切る計算となる。これでは仕事をとてもこなせないと思うサラリーマンは多いはずだ。
日本の時短政策は一定の限界に来たと言っていいかもしれない。

ここで、「政府は、労働者の労働時間を調整できるのか」という論点が浮上する。確かに、現在でも労働基準法の基準を満たしていない事業所は多い。また、人事・労務の法律実務は現状の労働条件を「合法化」させるためにどのように縫い合わせるかという点に労力が集中していることも事実である。

穏当な見方であるが、おそらくは政府のみが労働者の労働時間を調整することは困難であり、労働組合の再生や、事後的な行政監督権限、司法審査の強化、企業年金などをはじめとする社会政策の再検討が必要になってくるということになるのであろう。
だが、そうした問題に関する世論、政治の関心は常に低い。

当ブログでは、司法関係者に最近流行している「情報セキュリティ」や「知的財産権」といった法律分野についてはカテゴリーわけをしていない。それが重要な問題ではないというわけではない。そこにはまた多くの人の「痛み」があることも事実である。だが、声にならない痛みの声に耳を傾けることこそが本分であると考えているのである。
by foresight1974 | 2004-11-27 00:05 | 働く人々の「権利」を考える

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