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西武グループがはまった「心の泥沼」(By foresight1974)

 いったい何が起きているのだろうか?
 西武グループで相次いで起きた、大株主の株数過少記載問題は、本当に「首を捻る」としかいいようのない展開が続いている。
 実務的な見地から言えば、この問題は「ありえないほどの初歩的なミス」である。そして、そのありえないミスを長年見過ごしてきた会計士の無力、(被害者面しているが)監視する側である東京証券取引所の無力を思うと、形だけは立派ながら、この国は経済が発展途上にある中国の経済制度をとても笑えないほどお粗末な実態が浮かび上がってくる。




 そして、その西武グループを率いていたのは、異常な抑圧の中で「経営者」に育て上げられてしまった男だった。
 
 興味深いエピソードがある。「週刊ダイヤモンド」10月30日号では冒頭に西武グループ総帥・堤清二の異常な半生を紹介している。

父・康二郎氏は、後継者としての資格を見極めるため、一方的に幼い頃から父を試し続けた。彼が29歳のときに父親が亡くなるまで、会話に全神経を集中していたため食事の味はしなかった。大学時代は、朝四時から夜十二時まで拘束され、恩師も友人もいない。絶対権力者がすべてを引き継げと迫る極度の緊張関係を、自分を抑制することで懸命に耐えた。爆発を防いだのは母親の存在である。いぼ三兄弟の長男・清氏、次男・清二氏は父に反逆し、廃嫡された。自分がそうなれば、不遇の母親の居場所もなくなる。「おふくろはいつも、ごめんね、私が悪いの、と言う。おふくろを守るためなら、なんでも耐えられた」と振り返る目は潤んでいた。


 不祥事が発覚して以降、マスコミ各社は西武グループを厳しく批判し続けている。それはそれで一つの正論である。彼の半生がどうであろうと、彼の行動は市場を欺き、グループの信用を損ない、そこで働く多くの人々に不幸を及ぼした。しかし、正論だけでは泥沼の深さを測ることは出来ない。彼の経営姿勢、グループの歴史などを多面的に洞察して、いったい何が何をゆがめてしまったのかを見極めていかなくてはならない。
 冒頭のエピソードを書いた辻氏は、「彼の世界は閉じている。不祥事の根はそこにあるが、生き方そのものがそうなのである」と結んでいる。
 そして、日本のコーポレートガバナンス、コンプライアンスのあり方もやはり閉じているのである。

 しばしば指摘されているが、西部鉄道の44.8%の株式をコクドが保有し、そのコクドの40%を堤個人が持つという形でグループは堤に間接統治されている。中核会社のコクドは西武鉄道の筆頭株主であるだけでなく、100%出資のプリンスホテルや西武商事、50%出資の西武建設などを傘下に置き、さらにリゾートホテルやスキー場、ゴルフ場を経営し、西武鉄道の3500人を上回る3800人の社員を抱え、いわば「事業持ち株会社」の性格を持っている。(「総会屋事件が炙り出した『堤帝国』の落日」杜耕次 フォーサイト2004年4月号・新潮社)
 

このコクドの信用力が大きく西武鉄道が生み出す株価に依存していたのである。しかし、堤自身は公然と「鉄道経営に興味はない」と言い放った通り、上記引用のようなレジャー産業開発にのめりこんでいく。
 今回の不祥事発覚前から、西武鉄道の浮動株比率は10%を切るなど管理相場的色彩の濃い銘柄ではあった。だが、浮動株が異常に低い場合、経営は安定化するが、株価が少ない売買で乱高下するリスクを伴う。前掲の杜氏によれば「99年ごろから海外の年金ファンドに主導された値崩れが起きていた」とされており、今年4月に逮捕された総会屋はそこを狙っていた。つまり、親会社コクドの膨大な負債を西武鉄道の株の含み益で賄いきれるかを追及される、信用不安が起きることを西武鉄道首脳陣は恐れていたのである。

 もちろんこうした事情は日本のエスタブリッシュ社会は百も承知していたであろう。だが、大蔵・財務官僚が天下りしつづけた東証も、法律上の権限はともかく、収益体質をクライアントに大きく依存している監査法人も、総会屋事件が内部告発によって発覚し、東京地検の強制捜査に発展するまで何も出来なかったのである。

 日本にこのような事件が繰り返されつづける限り、バブルの清算とか、日本の企業社会の再生などはなしえない。それだけは確実に言える。
by foresight1974 | 2004-10-15 00:05 | 企業統治の公共精神

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