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なぜヤマト運輸は敗訴濃厚の裁判を起こしたか?(2)(By foresight1974)

 さて、このような困難にも関わらず、ヤマト運輸はなぜ裁判を起こしたのだろうか。

 第1に、株主や市場への説明責任を果たすためである。コンビニエンスストア業界第2位のローソンに振られ、ゆうパック取り扱いが始まるのを指を加えて眺めていたら、株主や市場から信認を問われかねない。不当な取引によって損害を受ける恐れが強まったならば、ただちに法的措置を取って会社財産の保全に努める善管注意義務(商法254条3項 これに違反した場合は民法415条にいう債務不履行責任を問われる)に従った判断であるといえる。有パックのコンビニ取り扱いを日本郵政公社が発表する前日にこうした措置をとったのは、まさにこの点にある。




 第2に、独占禁止法の解釈変更の可能性があることである。今回の訴えは、平成12年に改正された独占禁止法24条の「私訴制度」に基づくものであるが、先日紹介した地域振興券で郵政省から営業妨害を受けたときはまだこの制度がなく、ヤマト運輸は公正取引委員会に申告するほかなかった。しかも審査に半年かかったのち、結局不当な取引制限はなかったと判断されている。
 いずれ再開されるメールマガジンでも述べていこうと考えているが、公正取引委員会の権限は一般に考えられているよりはるかに小さい。つまり、今までは事実上「泣き寝入り」するほかなかったのであるが、裁判所に直接訴え出る制度が導入されたことにより、公正取引委員会告示「不公正な取引方法」の解釈が裁判所によって変更される可能性が生じている。ヤマト運輸はそこまで織り込んで勝訴の可能性があると考えているかもしれない。

 しかし、いずれにせよ一民間会社が所管する行政官庁や独立行政法人などを相手に訴訟を起こすことはまず考えられないことである。ヤマト運輸はかつての経営者が気骨ある人物であったとはいえ、彼が去ってから10年以上経つにも関わらずそうした気概を維持しているというのは、法を通じて会社経営の歴史を眺めてきた者から見たら、奇跡に映る。

 だが、これだけ世間の注目を集めた裁判であるにも関わらず、おそらくこの問題に関わる本質的な点を問われることはないだろうと思われる。
by foresight1974 | 2004-10-03 00:05 | フリー、そしてフェア・トレード

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