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ラーダービノード・パール
 A級戦犯を裁いた東京裁判(極東国際軍事裁判)において、被告人全員の無罪を主張したインド人判事。
 9人の判事が構成した多数意見に対し、個別意見(一般にはパール判決書と呼ばれる)において、東京裁判が依拠した「平和に対する罪」「人道に対する罪」が事後法であるとしたうえで、訴因とされた被告人全員の共同謀議が成立しないと主張した。
 しかし、彼がなぜこのような結論に至ったのか、正確に分析された書物はほとんど存在しなかった。1400頁に及ぶ個別意見書は難解であり、そのロジックがほとんど紹介されなかったうえ、後年、パールを偶像崇拝する保守派によって、主張が捻じ曲げられたからだ。

 ヒンドゥー・ナショナリズム研究で期待されている若手研究者、北海道大学准教授・中島岳史が著した「パール判事・東京裁判批判と絶対平和主義」(白水社)は、非暴力主義・絶対平和主義者(ガンジー主義者)であり、世界連邦建設運動の中心的人物でもあったパールの生涯を正確に追い、田中正明、小林よしのりらの右派によるご都合主義的「日本無罪論」=パール論の主張の欺瞞性を暴いた好著である。

 本作品は、パールと下中彌三郎を記念した建てられた、パール下中記念館の衝撃的な記述から始まる。

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 掃除やメンテナンスがなされた形跡は全くなく、ショーケースや手すりは、すっかり埃をかぶっている。証明は壊れ、床には落ち葉がたまっている。全体的にかび臭く、隙間風は冷たい。
 見学する人はほとんどいないのであろう。展示品は手入れされず、ひどく痛んでいる。写真にはカビが生え、展示プレートは剥がれ落ちている。
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 これが、靖国神社に顕彰碑まで建てられている人物が、政治的に利用されつくした末路である。

 パールの生涯は、非カーストで貧しい生い立ちからの立身出世となるまで。そして、法学者としての地位が確立し、東京裁判を経て、妥協なきガンジー主義者として、その理想を説いて回る後半で構成されている。

 作品の最大の山場である、パール個別意見に関する記述には驚かされる。著者の過去の作品は、主に文化的・社会学的な研究が多く、法学的研究がほとんどみられないが、法律用語も正確に用いられており、パールのロジックが要領よく、しかも完璧に再現されている。

 作品のテーマがパールの生涯自体に当てられているため、残念なことに、この個別意見がなぜ、保守派の賞賛に浴することになったのか、その経緯は今ひとつ明らかではない。
 リベラル派の研究者の多くが指摘している通り、パールは被告人全員を無罪とする一方、日本の戦争責任には容赦のない批判を浴びせている。南京大虐殺については「証拠は圧倒的に存在する」とし、その他の残虐行為を20以上指摘したうえで、「鬼畜の性格を持っている」と断じた。そのうえで通例の戦争犯罪の実行行為者に対する処罰は「正当である」とすら述べているのである。パールが東京裁判で問題にしたのは、あくまで行為当時、戦争指導者を法的に処罰することが可能かどうかであり、その点で被告人全員の無罪を主張していたに過ぎない。「日本無罪論」では断じてないのである。
 だが、松井石根、板垣征四郎、東条英機らの不興を買いそうな表現が多々見られるにも関わらず、彼らは狂喜し、時世の歌によみ、刑場の露と消えたのである。

 パールはその後、3度来日し、その度に自己のガンジー主義を強く訴えている。再軍備に反対し、平和憲法を擁護し、アメリカからの真の独立を、それこそ何度も説いて回ったのである。
 だが、非暴力主義を捨てた母国と同じく、冷戦の激化とともに日本は再軍備。そして対米従属路線を深め、パールは裏切られていく。世界連邦建設メンバーであった田中は、「日本無罪論」の中で、パールが戦時中日本を批判した部分のほとんどを削除した。政治姿勢に共感し、「首相になればいい」とまで言った岸信介は、安保改定を推し進めていく。
 
 パール晩年の主要な演説である「無言の演説」。病をおして、500人以上の聴衆の前で無言で合掌し続けた姿勢は大きな感動を呼び、後年保守派が偶像崇拝するうえでのエピソードの一つとなった。
 だが、その後の取材に応えたパールは悲観的だ。「国の最高方針決定者たちは、国家民族の運命を、あいも変わらず残酷にもてあそんでいるのです」「広島と長崎の原爆投下は、ただ不吉な破壊の日を迎え入れたに過ぎないかに見えます」―。
 ガンジー主義者としての妥協なき生涯の終わり。「長いものに巻かれていく日本」に対する諦観があったというのは、言いすぎだろうか。

 田中正明はパールの死後も、東条英機を悲劇の主人公として描かれ、自らも企画に参加した映画「プライド」の制作において、パール判決書を都合よく利用している。
 だが、これに激怒した息子のプロサント・パールは抗議の記事を地元紙に掲載。インド社会に大きなショックを与えた。

 このパールの子孫たちに、今度、参議院選挙で大敗したショック覚めやらぬ総理大臣・安倍晋三が面会するという。祖父の岸信介が首相であったとき、勲章をパールに授与した縁があってのことであろう。「美しい国」の総理大臣と、ガンジー主義者の子孫たちのやりとりは見物である。

※パールの名前は、中島の著作にならって表記した。
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by foresight1974 | 2007-08-15 23:34 | 書評・鑑賞
 今回の記事では、mixiコミュニティ「民主社会主義/社民主義の現代」での議論も踏まえて、二つのキーワードから参院選の総括を行いたい。

1、 保守の再構築

 参院選の後も、安倍晋三は「惨敗の責任は私にある」としつつ、「基本路線については多くの国民のみなさまに理解していただいている」と強弁している。「基本路線」とは憲法改正に象徴される「戦後保守主義の再構築」「戦後レジームからの脱却」「美しい国」といった陳腐な理念を指す。
 しかし、この強弁は次の二つの点から簡単に否定できる。

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by foresight1974 | 2007-08-11 12:17 | サイレント政治・社会評論
別に彼が辞めるべきかどーかなんでどーでもいいです。
問題なのは、こんな状態の安倍政権で「農相やりたーい♪」って、手を挙げる人がいるのか!?というギモン。

赤城の後任に要注目ですね!
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by foresight1974 | 2007-08-01 21:10 | サイレント政治・社会評論
b0037054_071340.jpg※8/1 一部加筆修正しました。

 驕りという言葉を辞書で引くと、「いい気になること。思い上がり。」という意味が出てくる。
 この言葉をストレートに当てはまりそうな人物は、まずは亀井静香のような典型的なフィクサータイプ、利権型政治家であり、安倍晋三のように、一見クリーンなタイプを思い浮かべる方は、そうは多くないのではないかと想像する。
 だが、今回の選挙で安倍晋三が敗北した理由は、まさにこの「驕り」によるものだ。
 根拠は何日もテレビに流れた、あのCMにある。

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by foresight1974 | 2007-07-31 00:41 | サイレント政治・社会評論
 さて、これまでみてきたように、極端な反対者を「仮想的」とし、稚拙な論理で反駁するものの、自身が打ち出す「改革」政策はどれもピント外れ。
 これが、この1年で安倍政権がやってきたことである。

 その最たる例が、「親学」提言の一件であろう。

◇「親学」提言のポイント
(1)子守歌を聞かせ、母乳で育児
(2)授乳中はテレビをつけない。5歳から子どもにテレビ、ビデオを長時間見せない
(3)早寝早起き朝ごはんの励行
(4)PTAに父親も参加。子どもと対話し教科書にも目を通す
(5)インターネットや携帯電話で有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング」の実施
(6)企業は授乳休憩で母親を守る
(7)親子でテレビではなく演劇などの芸術を鑑賞
(8)乳幼児健診などに合わせて自治体が「親学」講座を実施
(9)遊び場確保に道路を一時開放
(10)幼児段階であいさつなど基本の徳目、思春期前までに社会性を持つ徳目を習得させる
(11)思春期からは自尊心が低下しないよう努める


 もう、馬鹿らしさのあまり、論評する気にすらなれない。
 さすがに、「愛国」大好き伊吹文部科学大臣も苦言を呈して最終報告には盛り込まれなかったそうである。

 だが、この「提言」にこそ、安倍政権の本質が隠されている。
 それは、「独善」である。

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by foresight1974 | 2007-07-26 00:41 | サイレント政治・社会評論
 第二に、安倍政権が引き継いだ小泉構造改革路線は「新自由主義」ですらない、マガイモノの「改革」だという危機感だ。

 これは、「NHKドラマ「ハゲタカ」補論(2)・法の下の巨大な不平等」に関連して指摘しておきたかったのだが、小泉政権後のいわゆる「構造改革」は、田中政権後の経済の均衡拡大路線=財政バラマキ路線の歪んだ焼き直しにすぎないのではないだろうか。
 例えば、小泉政権で成し遂げられた(と思われている)二つの大きな「民営化」―道路公団と郵政事業であるが、いずれの改革も成功したといえるだろうか?新規参入で競争が促進されただろうか?電力は?金融は?ライブドアの堀江貴文に実刑判決が下る一方で、それ以上の組織手かつ悪質な不正会計が発覚した日興コーディアル証券は逮捕者が出るどころか、今ものうのうと上場している。
 新しい企業が参入して業界が「活性化」した例は絶無であり、特に道路公団と郵政事業は、民営化された後も新しい利権を手に入れて見事に「焼け太り」つつある。
 これは、小泉純一郎が偉そうに啖呵を切って「郵政解散」と名づけた時点で、すでに勝負あった。
 解散を断行した当日、彼は亡くなったばかりのヤマト運輸元会長・小倉昌男のお別れ会に出席している。だが、そのときすでにヤマト運輸は郵政事業への不参入を決定していたのである。その後、郵政公社はコンビニエンスストアにまで郵便ポストを設置して、民間業者のメール便事業を大きく圧迫し続けている。

 90年代後半からの一連の自民党の「改革」政策は、市場を拡大し、競争が活性化して消費者に利益が還元されるような成果はほとんどみられていない。
 小泉政権当時、安倍晋三は自身が最も不得意とするところである経済関係の閣僚を一度は経験してみたかった、といわれている。しかし、(1)で見せたような無能ぶりではとても務まらなかっただろうし、結局は、安倍は小泉純一郎にとって都合のいい客寄せパンダに過ぎない。「改革」を連呼しても、改革の何たるかを語ることはできないのである。

 その政策をこのまま続けても、拡大していく格差社会を食い止めることはできない。安倍晋三は、この対策の切り札として「再チャレンジ」なる頭の悪いネーミングの政策を実施しようとしている。だが、実効性のありそうな政策は出てこなさそうな気配である。
 フリーターやニートの問題は、景気が良くなったから雇用を増やせば解決する問題ではない。山田昌弘が「希望格差社会」で指摘したように、彼らの最大のネックはエンプロイアビリティ(就業能力)だ。その能力に対する自己信頼が深刻なレベルで失われているのである。
 この点をサポートするには総合的で息の長い教育政策が望まれる。しかし、安倍晋三が教育基本法に盛り込んだのは「愛国心」。もちろん、こんなもので彼らの希望が満たされるわけがない。

 また、最低賃金や残業時間割増賃金の引上げなど、一見有効にみえる政策も、実はピントがずれている。なぜなら、日本の企業社会で横行しているのは、サービス残業にみられる賃金の踏み倒しだからである。したがって、これらの対策は実は何の有効性もないばかりではなく、現在浮かび上がりつつあるサービス残業問題が再び水面下にもぐりこみかねない。本当の対策は、残業代を払わない経営者に対する厳罰化や制裁金の制度だが、いずれも自民党は消極的である。
 非正規雇用の拡大や働き方の多様化といった社会の変化に、自民党政権の政策は一貫性を著しく欠いており、かつ場当たり的である。
 小泉政権の成立当初、最初に話題になった政策は何だったか、皆さんはご記憶にあるだろうか?「ワークシェアリング」である。
 もちろん、6年間たなざらしにされている。

 失われた10年ののち、歪められた改革政策で格差が拡大し続けているのが今の日本である。「愛国心」から再チャレンジにいたるまで、余計なお世話ばかりで、本質的なところに目を向けられていない。

(3)につづく
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by foresight1974 | 2007-07-24 22:04 | サイレント政治・社会評論
 北海道大学公共政策大学院准教授の中島岳史は、専門のヒンドゥー・ナショナリズム研究だけではなく、現在の日本社会にも鋭い問題提起を投げかけている。

 彼のブログ「コールタールの地平の上で」では、7月1日の記事「参議院選挙の争点」の中で、以下の2つをしっかり問うべきだと述べている。

1、イラク戦争の総括
2、格差問題と新自由主義政策の是非

 「表層的で薄っぺらなことばを連呼する政治家に、憲法改正の発議が確実な6年間の政治を任せてはいけません。有権者もそのときの「気分」ではなく、地に足の着いた「思考」によって投票に挑むべきです。」という主張には大いに共感する。

 ささやかながら、この呼びかけにお応えして、私がこの選挙にどのような「思考」で投票に挑もうと考えているか、書き記しておきたい。

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by foresight1974 | 2007-07-24 02:03 | サイレント政治・社会評論
 傍目からは異常なまでの執着心にみえたが、ついに教育基本法の改悪が強行されてしまった。
 憲法や人権を守る大きな砦の一つが陥落したとみることもできるし、リベラル・革新陣営は怒りの声を上げている。しかし、圧倒的な実力差を考えると、いずれは覚悟すべき事態だったともいえる。

 とはいえ、教育基本法を改悪したところで、当面は大きな変化を心配しなくてもいいのではないかと考えている。
 というのも、保守の思惑どおりに教育を変えようとしても、そこにいる人間を明日からどかすわけにはいかないからである。

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by foresight1974 | 2006-12-17 18:25 | サイレント政治・社会評論
 それはとても奇妙な光景に思えた。

 それは私自身は生放送ではなく、後で流れたビデオで確認したときだが、安倍晋三がいささかまくしたてるような口調で、「番組がひどい内容になっていると側聞していたので、NHKだから公平公正にちゃんとやって下さいねと言いました。」と語ったときだった。
 通常、一般市民ならオンエアまで知りえない内容を「側聞」とはいえ事前に知っていて、しかも「ひどい内容」とまで把握していたことを平然と口にすることに対する違和感もさることながら、何より、私が強い違和感を覚えたのは、「公平公正」という言葉を、それを彼がさも平然と、当然であるかのごとく言い放ったことだった。

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by foresight1974 | 2005-01-13 23:00 | 表現の自由への長い道距

Let's think about day-to-day topics.


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