カテゴリ:企業統治の公共精神( 28 )

「稲山さんの海は、巨艦が行く大海原ですけれど、海といえば湘南の海しか浮かばない人たちもいるんですよ。」(喜文康隆「さらば渋沢資本主義」フォーサイト2000年7月号 ※小倉昌男の言葉より)


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by foresight1974 | 2015-05-24 11:31 | 企業統治の公共精神
 バブル崩壊以降、幾度となく改正を繰り返してきた会社法が、新法施行5年にして早くも改正の俎上に載せられている。
 会社法改正は、日本のコーポレートガバナンスのシステムが迷走してきた歴史でもある。
あるときは資本金の制度が強化されたと思ったら、最低資本金すら撤廃され、監査役の機能が強化されたと思ったら、それすら不要になる“自由な”組織設計が可能になったりした。
 そして、迷走は今回も繰り返された。
 今回の改正に至る、政府・民主党の動向と企業側の意見を取りまとめている日本経団連の動きについて、一言ずつ書き記しておきたい。

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by foresight1974 | 2012-08-04 22:50 | 企業統治の公共精神
 今回取り上げる用語は、ドラマ最終回で使われた「EBO(Employee Buy-out)」だ。
 正確な解説は、NHKドラマ「ハゲタカ」HPをご参照いただきたい。日本でもこうした買収は広まってきているが、純粋なEBOではない。
 経営陣による企業買収であるMBO(Management Buy-Out)と、従業員へのストック・オプションを組み合わせたMBEOとよばれる形態がほとんどだ。

 ここでは、EBO(MBEO)が破綻企業の従業員を救済する「救世主」になりうるか?について考えていたい。

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by foresight1974 | 2007-08-25 16:43 | 企業統治の公共精神
 今日は、「ウェブ進化論」でおなじみ、梅田望夫の連載コラム「シリコンバレーからの手紙 116 ―制度設計側が是正すべき一般投資家のリスク過重―」(Foresight2006年5月号・新潮社)をご紹介したい。

 梅田は、このコラムで重要な指摘をしている。
 それは、日本で「失敗しなくても返さなくていいお金」で企業冒険できる世界が日本で広がったことを喜びつつも、一面で日本の制度設計の行き過ぎだというのである。

 90年代末の米ネットバブル期の異常値を除き、米ナスダックの株式公開基準の感覚は「売上高が数十億円以上、利益有、売上高成長率50%以上」と覚えておけばいい。一方、今の日本は「売上高数億円程度、利益有、属しているセクターが有望」なら株式公開できてしまい、セクターがネット関連だと公開後に信じられないほどの高値がついてしまう。


 この結果として、梅田は「仕組み全体の関係者が取るリスクと得るリターンのバランスが、株式公開前の関係者にやさしく、株式公開後の関係者に厳しくデザインされ過ぎている」と述べている。
 その例として、ドリコムの例を挙げたのは適切であろう。つまり、株式公開にあたっては緩やかに審査され、上場がしやすいものの、株式公開後の異常な時価総額の膨張により、公開企業が適正な株価形成への誘導を難しくしている面があるのだ。公開後の多くの企業が、上場後に積極的な買収戦略へ傾倒してしまう背景だ。時価総額の毀損による株価暴落を防ぐため、いかがわしいマンション販売会社や中古車販売会社を買収したライブドアにも一脈通じている。

 ライブドア問題が刑事事件に発展したとき、株の暴落で損害を受けた株主たちがクローズアップされた。メディア報道の「同情的」見解とは裏腹に、ネット世界では株主達の悲惨な境遇を嘲笑・冷笑する空気が広がっていた。
 一面では正しい。正直、去年の今頃、ライブドアが権力を敵に回して大立ち回りを演じていた時点で、この株に一般投資家は手を出すべきではなくなっていた。社会的に非力な庶民がハンドリングできる状況ではなくなっていたからである。
 だが、それとは別に正されるべきは正されなければならない。法を破り、投資家に損害を与える企業をすみやかに退場させる一方、そのような企業が安易に株式を公開できなくするよう、厳格な規制も必要になるだろう。

 「売上高を数億円規模から数十億円規模へと伸ばす期間」とは、ベンチャーが「まだどうなるかわからない危なかっしい存在」から「真の公開企業」へ脱皮するための最大の難所である。
 今の日本の仕組みの最大の問題は、株式公開前の関係者が「早すぎる公開」によって先にハイリターンを確定してしまい、「最大の難所」に乗り切るリスクを公開以降に投資した一般投資家に負わせているところにある。


 この指摘も、堀江が逮捕前にすでに自己株式を売却して「一生遊んで暮らせる金」を手にし、逮捕後は東京地検特捜部を辞めた弁護士を中心とした金のかかる弁護団を組織している事実を見ても納得が行くだろう。

 ライブドア問題について、「ネットバブルに煽られた劇場型犯罪」的要素と、それにまつわる人間悲喜劇ばかりが取り上げられてきた。

 そろそろ、本質に迫る議論が必要である。
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by foresight1974 | 2006-05-01 00:19 | 企業統治の公共精神
住友信託銀、旧UFJとの訴訟で控訴 請求額は大幅減額(朝日新聞2006年2月24日)

 住友信託銀行が、信託部門売却の基本合意を守らなかったとして旧UFJホールディングス(現三菱UFJフィナンシャル・グループ)を訴えていた損害賠償請求訴訟で、住信は24日、請求を棄却した一審判決を不服として東京高裁に控訴した。

 損害の請求額は一審の1000億円から100億円に減額した。統合が実現すれば得られたはずの「逸失利益」の請求を取り下げ、統合の最終契約が結べると期待した「期待利益」を侵害されたことによる損害に改めた。

 一審判決は、旧UFJ側に最終契約を結ぶ義務があったとはいえないとして、逸失利益を求めた住信の請求を全面棄却した。一方、旧UFJは基本合意書に基づく独占交渉義務に違反したとして、期待される利益が損害を受けたことに言及したが、住信側が立証しなかったことを理由に賠償を認めなかった。


 全く理解に苦しむ控訴である。
 逸失利益と期待利益の違いは、「実際に統合した場合の事業効果」に関する賠償額が含まれるかどうかという点である。前者は含まれ、後者は含まれない。
 M&Aの基本合意書は、本格的な合併交渉の前に締結される契約書で、1次デュー・デリジェンス(買収先の監査)が行われた後、M&Aの基本スキーム(株式交換や合併などの法律上の事業統合方法)や、合併のスケジュール、独占交渉権に関する条項、違約金、場合によっては統合後の持株比率などを定める。
 一般的には抽象的なものにとどまることが多く、基本合意書を破って第三者と新たに統合交渉に入っても違法とはいえない。ただ、独占交渉権や違約金などが定められている場合、契約違反による損害賠償責任が発生する。
 金融機関のM&Aには、通常多額の費用をかけたデュー・デリジェンス必要となる。上記記事にある請求額は、個人的に妥当かやや少ないレベルではないかと感じている。
 今回の一審判決は今月13日に言い渡された。そこで、逸失利益ではなく期待利益による賠償請求は認められるとしながら、何と、「原告側の主張・立証がない」ということを理由に棄却したのである。これも珍しい判決である。
 弁論主義が適用される民事訴訟においては、通常、原告側が主張していない事実に基づいて裁判所が判決を下すことは許されない。つまり、旧UFJ側に賠償責任があると裁判所が考えていても、その旨の主張を住信側が行わなければ裁判で負けてしまうのである。
 通常考えられないミスだといっていい。

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by foresight1974 | 2006-02-26 10:12 | 企業統治の公共精神
 今夜、「プロジェクトX」の後番組、「プロフェッショナル・仕事の流儀」第一回が放送された。
 非常に作り手の「良識」を感じる番組だった。これほどの力が残っているならば、安倍晋三がいくらケチをつけようが、NHKは必ず再生できる。

 さて、その一回目で取り上げられた人物は、星野佳路。全国各地で破綻したリゾート施設の再生を請け負っている。

 特筆すべきは、会社の意思決定のシステムである。以下、番組HPより引用する。

 星野の会社の組織はきわめて独創的だ。社長を頂点とするピラミッド型ではなく、いわば「フラット型」。社員を10人程度のユニットに分け、ユニット毎に責任者のディレクターを置く。このディレクターは立候補制で、社員による投票の結果を重視して選ばれる。

 通常の会社では役員会にあたる重要な経営方針決定の会議も、社員に公開され、社員同士の議論で、大事な案件が決められていく。星野は議論のプロセスを見て、きちんとした考え方で議論が進められた上で、社員が決定したことには口をはさまない。
 

 こうした意思決定のシステムは、90年代にMITやハーバードで研究されたものである。
 同様の意思決定システムは外食産業のムジャキフーズなどが導入しており、成果を挙げている。
 社長は「意思決定」が仕事ではない、「審判」なのである。従来の発想を逆転させたリーダーシップのあり方である。
 とはいえ、ただの「審判」でもない。決定の結果に全責任を負い、誰をも叱責することはない。ある意味、究極的な民主主義を導入しているともいえるが、そこには従業員との適切な距離感と緊張関係が保たれている。

 リゾート再建はリスクが高いビジネスである。星野の手法が決して実を結ぶばかりではないだろう。だが、「自分で考えるようになった従業員たち」が全国で新しいリゾートビジネスを繰り広げていく。そこには、新しい何かが起こっている。
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by foresight1974 | 2006-01-10 22:49 | 企業統治の公共精神
 当連載の最終回は、ライブドア・フジテレビ問題が与えた影響を考えたい。
 
 まず、社会全体に与えた影響を考えると、ライブドア・フジテレビ問題は、そのセンセーショナルな取り上げられ方が良くも悪くも象徴的な意味合いを持ってしまったことは間違いはない。後世の人々も、この時代の空気を理解する事件で、この事件に触れざるを得ないだろう。劇場型の買収劇、法技術の粋を尽くしたに見せかけた法務攻防、最後の劇的な和解まで、素人的視点では「ヘタなドラマより面白い」という印象はあったのではないだろうか。

 また、この問題はジャーナリズムのあり方にも重大な疑問を投げかけた。当連載では産経新聞の報道姿勢を通じてこの点を取り上げたが、その後に続いた村上ファンドの阪神電鉄株取得事件、楽天のTBS株取得事件でも、利害関係のあるメディアによって同様の報道が繰り返されることになった。産経新聞だけが「ド変態」というわけではないことは指摘しておきたい。

 法的見地からはどうだろうか。これまでに、ライブドアの資金調達方法は合法であること、世間でいろいろと取り沙汰された防衛策は、実は現行商法でも可能であり、新会社法でも技術的な差がある程度にすぎないことも指摘した。
 また、ニッポン放送が発行した新株予約権に関する裁判所の判断の枠組みも従来の判例から逸脱したものではなく、その後に発生したニレコ事件、日本技術開発事件でも踏襲されている。判断の枠組みの「深化」の問題はあるものの、今回の問題が法的見地から決定的な「パラダイムシフト」を起こす事例ではないといえる。
 今回の問題に関連して、ある弁護士(匿名で報道されていたが、日比谷パーク法律事務所の久保利英明弁護士と推測される)が、「この事件のせいで日本のM&Aは10年前遅れた」と嘆いたと伝わっている。しかし、今日の新聞報道にもあるとおり、日本のM&Aは年間3,000件近くに達し、業種も金額も多様に富んでいる。目立つ事件ばかりがM&Aではない。実務的に大きな影響を与えていく事例がこれから何件も出てくることになるだろう。

 では、政治や政策に与えた影響はどうだろうか。
 今回の問題で重要なのは、保守勢力と政治的つながりの深いフジサンケイグループを狙った敵対的買収劇だったということだ。
 今回の問題に関し、政治家がどのように立ち回ったのかを検証し、最終回としたい。

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by foresight1974 | 2005-12-29 12:00 | 企業統治の公共精神
 本ブログは主に、法律問題をテーマとして取り上げているもので(それに関連する限りで社会問題に触れている)、今回の問題において誰が最終的に「トク」をしたか、ということには興味はない。
 だが、優秀な裁判官の条件が事件の「構図」全体を踏まえたうえで、優れた法律判断を示すことにあるように、本ブログでもこの事件全体をどのような「構図」で眺めているのかを、明らかにしておく必要があると思われる。

 結論からいうと勝利者はいないということになる。
 論者の中にはリーマンの一人勝ちと言う者もいるのだろうが、本来黒子役であるべき証券会社が堀江の余計なはしゃぎっぷりによって世間からイロモノ扱いされてしまった。「信用」が命の金融機関にとって大きなダメージである。今後、「江戸の仇は長崎で討つ」ことを最も得意とする人々によって、陰湿な報復を受けるリスクを負ったのである。
 メディアの守護神であり、今回フジテレビのTOBの営業面を支え続けた電通も、数字の上ではニッポン放送を守ることは出来なかった、力の限界を痛感したはずである。
 ニッポン放送の子会社化に余計な出費をしたフジテレビももちろん勝者ではない。
 司法戦争に勝利したライブドアも、M&Aの戦いで勝利を収めることが出来なかった。楽天とTBSの攻防が山場を迎えつつあった11月、ライブドアとフジテレビが設置した「業務提携推進委員会」が期限の半年を終えて解散した。事実上、フジテレビの「時間稼ぎ」となった同委員会で、ライブドアはメディアとネットの融合に何ら大きな成果を挙げることはできなかった。彼のふるまいと向かい合ったフジテレビからすれば当然のことであろう。
 もう一人、この「業務提携委員会」設置を柱とした、フジテレビとライブドアの「和解」を演出した者がいる。ソフトバンク・インベストメントの北尾吉孝である。ライブドアの司法戦争の勝利が確定し、絶体絶命のピンチに立たされたフジテレビを救い出した彼は一躍メディアの寵児となった。彼は勝利者といえるのだろうか?
 フジテレビの新たな守護神にソフトバンクの名前が出たとき、私は思わず噴出してしまった。7年前、Foresightに出たレポートを覚えていたからである。

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by foresight1974 | 2005-12-26 19:46 | 企業統治の公共精神
 前回のブログで、ライブドア・ニッポン放送事件における裁判所の判断の枠組みについてお話したが、今回はそこで残された課題についてお話していきたい。

 大まかに言うと、「会社は誰のものなのか」という点と「企業価値とは何なのか」という点だ。いずれも具体的な争訟の論点にはなじみにくく、今回の事件でもそれについて示唆的な表現にとどまるのはやむをえないだろう。どちらかといえば、こうした論点は実務の世界というより、アカデミックな世界に与えられた宿題といえる。

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by foresight1974 | 2005-12-25 10:49 | 企業統治の公共精神
 いよいよ、今回からニッポン放送がとった敵対的買収の防衛策、新株予約権の発行について論じていきたい。

 ニッポン放送は、2月23日の取締役会において、大量の新株予約権をフジテレビに発行する決議をした。その数は普通株4270万株という膨大なもので、発行済株式総数の1.44倍にものぼった。この時点で、ライブドアは42%の持ち株比率を有していたが、予約権が行使された場合17%にまで引き下げられてしまう。
 これに対し、ライブドアは翌24日、本件新株予約権発行の差止めの仮処分を申し立てた。

 本件について、法曹界の「予想」は真二つに分かれた。
 連載にあたり、各種報道をもう一度見直してみたが、「べき論」でいうならばライブドアを支持する意見が多かったように思う。しかしながら、裁判所がどのように判断するかという「予想」に関して、自信をもって予想した法律家はほとんどいなかった。
 ネット上の友人の間でも意見が分かれた。私は「ライブドアにせめて1勝くらいして欲しい」という希望を述べたのに対し、金融機関に勤める友人は「全敗」を断言。知合いの弁護士も「全敗」。ライブドアの「全勝」を予想した者は誰もいなかった。
 なぜか。それは裁判所の判断の仕方が純粋な法理論の判断というよりは、具体的妥当性のある解決策を設定し、そこから「逆算」して法律論が組み立てられるという現実があるからである。
 ライブドアの資金調達スキームは当時の法律では合法であることは明らかであった。だが、そうしたライブドアの「卑怯な」やり方を裁判所が後押しするような法律判断を示すかどうか、自信が持てなかったのである。

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by foresight1974 | 2005-12-24 19:06 | 企業統治の公共精神

Let's think about day-to-day topics.


by foresight1974