カテゴリ:憲法哲学( 33 )

われわれ、イギリスのような国に住む人間としては、国際関係のような大問題についても自分で考え、意見をまとめるつとめがあるのかもしれません。しかし、人生というのはそういうものでしょうか。庶民がすべての問題について「強い意見」を持つことなど期待できるはずがありません。(中略)そして、そうした期待は非現実的であるとともに、望ましいことでもないように思います。結局のところ、庶民が学び知りうることにはかぎりがあるわけで、国家の大問題について、彼らすべてに「強い意見」を示すように望むのは、賢明なこととはいいがたいでしょう。
(カズオ・イシグロ「日の名残り」)


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by foresight1974 | 2014-09-20 10:13 | 憲法哲学
 絶対的平和主義が成立する前提を考えると、一般にはいわゆるユートピア的な状況が想定されがちだ。軍事力の強い国が弱い国を踏みにじってきた歴史が過去に数多く存在することを考えると、そうした想定をすることは自然ではある。
 が、ここで考えたいのは絶対的平和主義が成立「しうる」前提である、ということである。絶対的平和主義も抑止力による平和主義も、最終的には民意に委ねられた政治家の意思によって決定される。その意思決定が可能な範囲がどの程度存在するかを明らかにするのが本稿の任務である。
 絶対的平和主義は、軍事力による防衛という手段を放棄する政策である以上、その政策決定が可能であるには、常に周辺国との間で1つの共通認識が必要である。それは、軍事的攻撃の誘惑より平和を維持する魅力が常に勝っていなければならない、ということである。それはいったいどのような前提があれば可能だろうか?

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by foresight1974 | 2010-03-28 09:57 | 憲法哲学
 一連の参院選報道の中で、最も気に入らないことについて書き記しておきたい。
 参院選は、政権選択選挙ではないという、一部保守系メディアの主張だ。
 中には、読売新聞のように偉そうに「改憲案」なるものを発表している分際で、そのような不勉強な見解を主張しているところもある。
 この際、一学究としてきちんと指摘しておきたい。
 真っ赤なウソである。

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by foresight1974 | 2007-08-02 00:18 | 憲法哲学
 さて、前回では愛敬浩二が「改憲問題」(ちくま新書)で示した「絶対平和主義のリアリズム」の要点を説明した。
 もう一度敷衍すると、愛敬が同書で引用した憲法学者・樋口陽一の以下の言葉に尽きることになる。

 戦後憲法学は「非現実的」という非難に耐えながら、その解釈論を維持してきた。・・・・・・その際、過小に見てはならないのは、そういう「非現実的」な解釈論があり、また、それと同じ見地に立つ政治的・社会的勢力・・・・・・があったからこそ、その抑止力の効果を含めて、現在かくあるような「現実」が形成されてきたのだ、という事実である。


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by foresight1974 | 2007-01-03 16:35 | 憲法哲学
 さて、前回までは一般に流布している改憲派の「現実主義」は、考えられているほど「現実的」ではないということを論じてきた。

 では、護憲派の典型的主張と考えられている「絶対的平和主義」による憲法9条擁護論―自衛隊や日米安保による安全保障システムを否定する考え―は、「非現実的」なのだろうか?

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by foresight1974 | 2006-12-10 08:29 | 憲法哲学
入学式や卒業式で日の丸に向かっての起立や君が代の斉唱を強要するのは不当だつぉてい、東京都立の高校や養護学校などの教職員が都教委を相手に、起立や斉唱義務がないことの確認などを求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。藤波孝一裁判長は、違反者を処分するとした都教委の通達や職務命令は「少数者の思想・良心の自由を侵害する」として違憲・違法と判断。起立、斉唱義務がないことを確認し、違反者の処分を禁止した。さらに、401人の原告全員に1人3万円の慰謝料を支払うよう都に命じた。都側は控訴する方針。(朝日新聞2006年9月22日朝刊)


判決文のコピーを取り寄せて確認した。
間違いない。現在考えられる限りで最高水準の憲法判断だ。裁判所の英知に敬意を表したい。
このように断言するには、以下の2つの理由がある。

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by foresight1974 | 2006-10-14 22:06 | 憲法哲学
 大学までに歴史、軍事、法律、そしてなにより「人間」そのものを学んできた人間からすると、実に不思議に思えることがある。
 それは、軍事知識を豊富に有し、自らを現実主義者だと言い切ってはばからない方々が、「自分も間違える」という可能性に関して、全くの無頓着であるということである。
安全保障というのがリスク、つまり将来起こりうる危険に備えるということだとしたら、その対象はこの国の隣人たちばかりではない。まず何より自らが過ちを犯しうる可能性について備えなければならないはずである。
 彼らは、その豊富な知識(端から見ると以外の何物でもないが)が、「過ちを犯す」ことを避けうると信じているようだが、そのような見方が夢想に過ぎないことを、「幻想の防衛力」と銘打った3回の論考で明らかにしてきたつもりである。
 「国を守る」という使命感を私は腐すつもりはない。だがそのためには、まず何より、自分のヒューマニズムと愚かさを等距離で眺められなければならない。
 「念仏平和主義者」を腐せば身に付くものではないのである。

 こうした点からすれば、彼らが憲法を改正し、「健全な抑止力」を保持するべきという考えも疑問の対象とするべきであろう。
 彼らには「抑止力」という考えが無条件にこの世の中で成り立っていると信じているらしい。その証拠に、戦争と平和に関する議論を重ねると、彼らが必ずといっていいほど持ち出す議論が、「自分の家に強盗が押し入ったとき、武器もなしに家族を守れるのか?」という陳腐な設例である。
 そこには重大な錯誤がいくつもあることを彼らはわかっていない。それを明らかにするために、この陳腐な設例にあえて答えてみよう。

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by foresight1974 | 2006-09-25 19:53 | 憲法哲学
 マクノートンに耳を傾けながら、フォレスタルは背筋が寒くなるのを感じた。彼は単に、ベトナム情勢の楽観的評価に挑戦しているだけではない。それだけのことなら、ワシントンにも同じ見解の人間は数多くいる。彼が挑戦しているのは、もっと基本的な問題だ。ワシントンが事態を掌握しているという幻想、選択の余地を残し、いつでも望むときに、望む形でベトナム問題を処理できるという幻想、これに挑戦しているのだ。問題は、ベトナムの混迷や脆弱さだけではない。外国のできごとを意のままにコントロールできるとするワシントンの最も神聖な幻想に、この男は立ち向かっているのだ。(「ベスト&ブライテスト」ディヴィッド・ハルバースタム 浅野 輔訳)


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by foresight1974 | 2006-05-14 14:55 | 憲法哲学
 彼(情報諮問委員会委員のクラーク・クリフォード)は、まず椅子の背にもたれかかり、しばらく瞑想してから、やおらテーブルに向き直り、拳で叩かんばかりに強い調子で言った。「相手が黙っていない。われわれが何をしても、それに見合うだけのことを相手はするだろう。北ベトナムと、その次には中国が、われわれに勝利を許さない。われわれが部隊を投入すれば、北ベトナムも部隊を投入するだろう。その次には中国軍がやってくる」。できることなら、相手との交渉を開始すべきだ、と彼は言った。華麗な修辞を好むクリフォードは、一息入れてから劇的にこう結んだ。「私はアメリカの前途に破局を見る思いである。」(「ベスト&ブライテスト」ディヴィッド・ハルバースタム 浅野 輔訳)


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by foresight1974 | 2006-05-14 09:51 | 憲法哲学
 (マクジョージ・バンディが作成した「ペンタゴン・ペーパーズ」について)その影響力は大きかった。それは人を動かし、意見を変えた。これは、いかに誤った政策が合理的な判断の装いのもとに構築されうるかの、記念碑的文書である。あたかも、世界で最も豪華な邸の建築を発注し、超一流の建築家を雇い、イタリアから最上級の大理石をとりよせ、壁板にはレッドウッドの逸品を使い、室内装飾には金に糸目をつけず贅沢を尽くしたが、ただ一つ、ささいなことを見落としたために、台なしにしてしまったようなものであった。敷地に泥沼を選んだのである。(「ベスト&ブライテスト」ディヴィッド・ハルバースタム 浅野 輔訳)


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by foresight1974 | 2006-05-03 18:53 | 憲法哲学

Let's think about day-to-day topics.


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