沖縄は怒りに燃えている(1)
2007年 10月 05日
1995年、沖縄は怒りに燃えていた。
同年9月に発生した米兵による少女暴行事件は、その残忍な手口もさることながら、日米地位協定の不当な取り決めにより、容疑者の迅速な引渡しが行われなかったことが、県民の怒りに火をつけた。
10月に宜野湾市で開かれた抗議集会に集まった県民は8万5千人。
沖縄の怒りは時の政府を動かし、劇的な普天間基地返還合意に至ることになる。
あれから12年。
沖縄は、ふたたび怒りに燃えている。
きっかけは、3月末に発表された文部科学省の教科書検定だった。
日本史A、Bでは沖縄戦の「集団自決」について、日本軍が強制したとの記述7ヶ所(5社7冊)に、日本軍による強制または命令は断定できない」として修正を求める検定意見が初めて付いた。このため、各社は、日本軍の関与に関する記述を削除し、教科書から日本軍による集団自決強制が消えてしまった。
発表直後から沖縄県内では激しい反発が起こり、4月以降、県内の各自治体・議会で反対の声明・決議が行われたが、永田町の議論は低調だった。年金問題などに押されたこともあったが、何より「美しい国」―安倍内閣が冷ややかだった。
教育基本法改正、防衛省設置法など、日本の独善的な右傾化を押し進める者たちからみれば、鼻にもかけぬような話であったろう。
だが、事態は急変する。7月の参院選で自民党は大敗。安倍内閣は退陣する。
沖縄でも事態は動いた。
8月に入ると、県知事・仲井真弘多は翌月に行われる県民大会への参加を表明。超党派による抗議運動が確定的となった。
すでに6月には県内の全ての地方議会で抗議の決議が採択している。迷走を続けていた沖縄自民党の意見もまとまるなど、一致団結した抗議運動が固まっていく。
メディアの見方もそうだったが、私はこの時点から、この県民大会が12年前に宜野湾で行われた大会を超えるかどうかがキーポイントになると見ていた。
当時と違い、沖縄の世論は多様化している。移住者も多く、若者は過去の歴史への関心が薄れつつある。抗いがたい時間の流れに抗する「抗議の声」が上がるのかどうか。不安の種は尽きなかった。
そして、9月29日。大勢は決した。
主催者発表によれば、参加者約11万人。12年前を大きく超える怒りの声が、永田町を動かそうとしている。
ところで、この声にささやかに「水」を差そうとした動きがある。
10月3日、産経新聞コラム「産経抄」では、朝日新聞が9月30日の朝刊一面で報じた「県民大会・参加者11万人」記事に噛み付き、「関係者」の話として、「参加者は最大で4万3000人だそうです。沖縄の警察は、主催者の反発を恐れてか真実を発表できないのです。」と書きなぐったのである。
だが、この間違いだらけのコラムはあっさりと反駁されてしまう。
もう一つ、恵村が書いていないことにも触れておこう。
産経新聞「4万3千人」説の根拠となった「関係者」の話を掲載している新聞社がもう一つある。集団結婚式などのいかがわしい宗教的儀式で多額の資金を集めるカルト宗教・統一教会が支配する「世界日報」である。こちらは公安関係者の話として「4万2千人」という記事を掲載している。
カルト宗教ごときに天下の公安警察が「うっかり」情報をリークするなど考え難いと思われるが。。。後はどちらを信用なさるのか。読み手の皆さんのご判断にお任せしたい。
ただ一つ言えるのは、この県民大会が確実に政治を動かそうとしている、ということだ。
警備を手配している沖縄県警が推計したと思われる参加人数は公表されていないが、確実に首相官邸に情報として上がっているものと思われる。(※)
朝日新聞が11万人と書いたところで、教科書修正に動くはずがない。主催者発表が11万人というのは、運動家特有の「サバ読み」であることを割り引いても、相当近い数字が首相官邸に知らされているものと思われる。
その結果が代表質問に対する首相・福田の答弁につながっているのである。
12年前の米兵少女暴行事件をきっかけにして生まれた、普天間基地返還合意は未だに実現をみていない。
そして、沖縄の人々の「こころ」を踏みにじる行為は繰り返された。
この事件をきっかけにして、政治は「沖縄」と真摯に向かい合わなければならない。
(※)について
集会等での主催者側と警察発表では、通常大きな食い違いがある。
それは、主催者側の「サバ読み」が原因の一つであるが、他方、警察側発表も「実数」ではないことを付言しておきたい。
「足を数えて2で割る」「上空からヘリで見た人の勘」などいくつかの説があるがはっきりしていない。ただ、あるサンプルから統計的に推論する方法が採られていることは間違いがないようである。
同年9月に発生した米兵による少女暴行事件は、その残忍な手口もさることながら、日米地位協定の不当な取り決めにより、容疑者の迅速な引渡しが行われなかったことが、県民の怒りに火をつけた。
10月に宜野湾市で開かれた抗議集会に集まった県民は8万5千人。
沖縄の怒りは時の政府を動かし、劇的な普天間基地返還合意に至ることになる。
あれから12年。
沖縄は、ふたたび怒りに燃えている。
きっかけは、3月末に発表された文部科学省の教科書検定だった。
日本史A、Bでは沖縄戦の「集団自決」について、日本軍が強制したとの記述7ヶ所(5社7冊)に、日本軍による強制または命令は断定できない」として修正を求める検定意見が初めて付いた。このため、各社は、日本軍の関与に関する記述を削除し、教科書から日本軍による集団自決強制が消えてしまった。
発表直後から沖縄県内では激しい反発が起こり、4月以降、県内の各自治体・議会で反対の声明・決議が行われたが、永田町の議論は低調だった。年金問題などに押されたこともあったが、何より「美しい国」―安倍内閣が冷ややかだった。
教育基本法改正、防衛省設置法など、日本の独善的な右傾化を押し進める者たちからみれば、鼻にもかけぬような話であったろう。
だが、事態は急変する。7月の参院選で自民党は大敗。安倍内閣は退陣する。
沖縄でも事態は動いた。
8月に入ると、県知事・仲井真弘多は翌月に行われる県民大会への参加を表明。超党派による抗議運動が確定的となった。
すでに6月には県内の全ての地方議会で抗議の決議が採択している。迷走を続けていた沖縄自民党の意見もまとまるなど、一致団結した抗議運動が固まっていく。
メディアの見方もそうだったが、私はこの時点から、この県民大会が12年前に宜野湾で行われた大会を超えるかどうかがキーポイントになると見ていた。
当時と違い、沖縄の世論は多様化している。移住者も多く、若者は過去の歴史への関心が薄れつつある。抗いがたい時間の流れに抗する「抗議の声」が上がるのかどうか。不安の種は尽きなかった。
そして、9月29日。大勢は決した。
主催者発表によれば、参加者約11万人。12年前を大きく超える怒りの声が、永田町を動かそうとしている。
ところで、この声にささやかに「水」を差そうとした動きがある。
10月3日、産経新聞コラム「産経抄」では、朝日新聞が9月30日の朝刊一面で報じた「県民大会・参加者11万人」記事に噛み付き、「関係者」の話として、「参加者は最大で4万3000人だそうです。沖縄の警察は、主催者の反発を恐れてか真実を発表できないのです。」と書きなぐったのである。
だが、この間違いだらけのコラムはあっさりと反駁されてしまう。
朝日新聞2007年10月4日 夕刊2面 窓 論説委員室から
「産経抄」の自己矛盾
「朝日新聞をたたくのは自由だが、事実の確認だけはくれぐれもお忘れなく」
先月28日のこの欄〔らん〕で、産経新聞の1面コラム「産経抄〔しょう〕」にそう呼びかけたところ、3日の「産経抄」でお返事があった。
いやはや驚いた。こちらの指摘はほっかむりしたまま、こんどは沖縄〔おきなわ〕戦の集団自決をめぐる29日の県民集会の報道をとりあげて、朝日に「事実の確認だけはくれぐれもお忘れなく」と切り返してきたのである。
朝日新聞は朝刊1面で「沖縄11万人抗議」の見出し(東京本社最終版)で大きく報じたが、「11万人は主催者発表の数字です」「関係者によると、参加者は最大で4万3000人だそうです」というのだ。
ならば当然、産経は「参加者は4万3000人」と書いているのだろう。そう思って記事を探すと、社会面にこんな見出しがあった。「撤回求め11万人集会」
何だ、同じではないか。
首をひねりつつ2日の「産経抄」を読み返すと、そこにもこんなくだりがある。
「11万人(主催者発表)が参加した」
11万人という数字が主催者発表であることはその通りだ。朝日の記事も「参加者は主催者発表で11万人」と明記している。
自ら11万人と繰〔く〕り返しながら、やはり11万人と書いた朝日をたたく。自己矛盾〔じこむじゅん〕としか言いようがない。
きちんとした批判なら耳を傾〔かたむ〕けたいが、意味不明の批判には答えようがない。重ねての忠告で恐縮〔きょうしゅく〕だが、事実の確認だけはくれぐれもお忘れなく。
〈恵村順一郎〉
もう一つ、恵村が書いていないことにも触れておこう。
産経新聞「4万3千人」説の根拠となった「関係者」の話を掲載している新聞社がもう一つある。集団結婚式などのいかがわしい宗教的儀式で多額の資金を集めるカルト宗教・統一教会が支配する「世界日報」である。こちらは公安関係者の話として「4万2千人」という記事を掲載している。
カルト宗教ごときに天下の公安警察が「うっかり」情報をリークするなど考え難いと思われるが。。。後はどちらを信用なさるのか。読み手の皆さんのご判断にお任せしたい。
ただ一つ言えるのは、この県民大会が確実に政治を動かそうとしている、ということだ。
警備を手配している沖縄県警が推計したと思われる参加人数は公表されていないが、確実に首相官邸に情報として上がっているものと思われる。(※)
朝日新聞が11万人と書いたところで、教科書修正に動くはずがない。主催者発表が11万人というのは、運動家特有の「サバ読み」であることを割り引いても、相当近い数字が首相官邸に知らされているものと思われる。
その結果が代表質問に対する首相・福田の答弁につながっているのである。
12年前の米兵少女暴行事件をきっかけにして生まれた、普天間基地返還合意は未だに実現をみていない。
そして、沖縄の人々の「こころ」を踏みにじる行為は繰り返された。
この事件をきっかけにして、政治は「沖縄」と真摯に向かい合わなければならない。
(※)について
集会等での主催者側と警察発表では、通常大きな食い違いがある。
それは、主催者側の「サバ読み」が原因の一つであるが、他方、警察側発表も「実数」ではないことを付言しておきたい。
「足を数えて2で割る」「上空からヘリで見た人の勘」などいくつかの説があるがはっきりしていない。ただ、あるサンプルから統計的に推論する方法が採られていることは間違いがないようである。
by foresight1974
| 2007-10-05 01:38
| 表現の自由への長い道距