安倍晋三、心の驕りに敗れる

b0037054_071340.jpg※8/1 一部加筆修正しました。

 驕りという言葉を辞書で引くと、「いい気になること。思い上がり。」という意味が出てくる。
 この言葉をストレートに当てはまりそうな人物は、まずは亀井静香のような典型的なフィクサータイプ、利権型政治家であり、安倍晋三のように、一見クリーンなタイプを思い浮かべる方は、そうは多くないのではないかと想像する。
 だが、今回の選挙で安倍晋三が敗北した理由は、まさにこの「驕り」によるものだ。
 根拠は何日もテレビに流れた、あのCMにある。



 皆さんもご覧になったかと思うが、エルガー「威風堂々」に載って、拳を握り締めた安倍晋三が語りかける。。。「自民党は約束します。。。年金の全額支払いに責任を持って取り組みます。。。教育再生。。。地域活性化。。。地球温暖化対策。。。憲法改正」

 CMを初めて見た感想は、「この人は、自分がどう思われているのか全く分かっていないんだな。」ということだった。あのCM、流れれば流れるほど、有権者の反発を増幅させていたに違いない。
 あまり語られていないが、選挙前には日本の90%近くを占めるサラリーマンの給料支払が集中する20日、25日があった。つまり、日本の有権者の非常に多くの人々が、いきなり跳ね上がった所得税と住民税の源泉徴収額にうんざりし、家に帰ってテレビをつけたら、「あのCM」が流れてくるわけである。
 まあ、普通に引くよね。

 鈍感、ということでは前任者・小泉純一郎も共通していたが、安倍は小泉ほど孤高になりきれるキャラではない。田中真紀子、福田康夫をはじめ、身内をバッサバッサと切り捨てるような非情さは持ち合わせていない。「論功行賞」と叩かれていたように、むしろ身内を徹底的にかば侠気を持ち合わせている方だ。
 おそらく、安倍晋三には心の驕りがある、との主張に反発を感じる方は、その辺の人間的優しさの部分で、安倍にシンパシーを感じるのだろう。

 だが、政治家はそんな優しい職業ではない。
 安倍晋三の善良さと美辞麗句をストレートに受け止めすぎる人々は、その背後に潜む彼の独善という危険に気づいていない。
 安倍晋三の理念の独善性については当ブログですでに触れているので、そちらをご参照いただきたいが、彼は自分自身の独善さにどのくらい敏感であっただろうか。
 安倍は選挙戦中、「日本ではディベート(討論)型の選挙は定着しないのかなあ…」と漏らしたと伝えられている。安倍の特技がディベートだったというのは初耳であるが、それはさておき、このエピソードは安倍の自己評価の「勘違い」ぶりを物語っていて興味深い。
 はっきり言わせてもらうが、彼はディベートをやらせるときっとヘタクソだろう。
 テレビインタビューを見てて思うが、反対意見にすぐ熱くなって口調が早口になり、相手の意見をさえぎる見苦しい場面が目立つ。前任者・小泉のように冗談ではぐらかせるような人間的度量に極めて乏しい。
 私は、安倍晋三が総裁選挙に立候補した当時から思っていた危惧なのだが、彼は自分自身が本当はどのような人物なのか、分かっていないようである。前任者は少なくとも、その点をよくよく知っていた。だから、惨敗覚悟で何回も総裁選挙に立候補し、いったん総裁になったら最後、死に物狂いでその地位を守り通したのである。自らの「キャラ」をしっかりと国民に売り込むことによって。
 それに対し、安倍晋三の無知は、自分を省みることのない「驕り」につながっている。
 安倍晋三は、民主党に負けたのでも、身内の不始末で敗れたのでもない。それ以前に自分の心の中の独善的な驕りに敗れていたのである。身内の不始末も、民主党の策略も、全て彼の驕りに端を発しているといって過言ではない。

 選挙結果について、簡単に感想を述べておきたい。
 自民大敗、民主勝利。過半数割れ。そして安倍続投。
 条件付きながら、現時点では護憲の政治的立場を取る筆者のような者にとっては、願ってもない展開である。全てが理想の組み合わせと言って良い。
 筆者のみたところ、安倍はまだ自らの愚かさに気づいていない。このような人物が「人間は自分の善良さを信じるだけではダメなんだ。」ということに気づくと、とたんに打ち崩すのが難しくなるが、今のところ、その徴候はない。民主党の党勢のなさは相変わらずだが、この男が相手である限り、選挙をそう心配することはなさそうである。
 前任者の鈍感さをはるかに通り越してしまった間抜けな男は、まだ美しい国という言葉が国民に受けると信じきっているからだ。

 安倍晋三の続投会見を見ていた。
 安倍は厳しい表情をほとんど崩すことなく、記者からの手厳しい質問に逃げることなく真正面から応じている。写真の通りである。
  だが、テレビにも写真にも写らない、安倍晋三の脇に居並ぶ自民党幹部の面々の態度は、およそ一人前の大人の態度とは思えぬものだった。
 麻生は足を組んで前に大きく投げ出し。「姫に退治された」片山は呆然とした表情でガニ股になった足を直そうとしない。青木にいたっては安倍のやり取りを一切聞くことなく、完全に舟をこいでいた。
 これが、安倍続投を決めた面々の、今の安倍晋三に対する気持ちの表れといったらいいすぎだろうか。
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by foresight1974 | 2007-07-31 00:41 | サイレント政治・社会評論

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