参院選:安倍政権の何を糾すべきなのか(2)

 第二に、安倍政権が引き継いだ小泉構造改革路線は「新自由主義」ですらない、マガイモノの「改革」だという危機感だ。

 これは、「NHKドラマ「ハゲタカ」補論(2)・法の下の巨大な不平等」に関連して指摘しておきたかったのだが、小泉政権後のいわゆる「構造改革」は、田中政権後の経済の均衡拡大路線=財政バラマキ路線の歪んだ焼き直しにすぎないのではないだろうか。
 例えば、小泉政権で成し遂げられた(と思われている)二つの大きな「民営化」―道路公団と郵政事業であるが、いずれの改革も成功したといえるだろうか?新規参入で競争が促進されただろうか?電力は?金融は?ライブドアの堀江貴文に実刑判決が下る一方で、それ以上の組織手かつ悪質な不正会計が発覚した日興コーディアル証券は逮捕者が出るどころか、今ものうのうと上場している。
 新しい企業が参入して業界が「活性化」した例は絶無であり、特に道路公団と郵政事業は、民営化された後も新しい利権を手に入れて見事に「焼け太り」つつある。
 これは、小泉純一郎が偉そうに啖呵を切って「郵政解散」と名づけた時点で、すでに勝負あった。
 解散を断行した当日、彼は亡くなったばかりのヤマト運輸元会長・小倉昌男のお別れ会に出席している。だが、そのときすでにヤマト運輸は郵政事業への不参入を決定していたのである。その後、郵政公社はコンビニエンスストアにまで郵便ポストを設置して、民間業者のメール便事業を大きく圧迫し続けている。

 90年代後半からの一連の自民党の「改革」政策は、市場を拡大し、競争が活性化して消費者に利益が還元されるような成果はほとんどみられていない。
 小泉政権当時、安倍晋三は自身が最も不得意とするところである経済関係の閣僚を一度は経験してみたかった、といわれている。しかし、(1)で見せたような無能ぶりではとても務まらなかっただろうし、結局は、安倍は小泉純一郎にとって都合のいい客寄せパンダに過ぎない。「改革」を連呼しても、改革の何たるかを語ることはできないのである。

 その政策をこのまま続けても、拡大していく格差社会を食い止めることはできない。安倍晋三は、この対策の切り札として「再チャレンジ」なる頭の悪いネーミングの政策を実施しようとしている。だが、実効性のありそうな政策は出てこなさそうな気配である。
 フリーターやニートの問題は、景気が良くなったから雇用を増やせば解決する問題ではない。山田昌弘が「希望格差社会」で指摘したように、彼らの最大のネックはエンプロイアビリティ(就業能力)だ。その能力に対する自己信頼が深刻なレベルで失われているのである。
 この点をサポートするには総合的で息の長い教育政策が望まれる。しかし、安倍晋三が教育基本法に盛り込んだのは「愛国心」。もちろん、こんなもので彼らの希望が満たされるわけがない。

 また、最低賃金や残業時間割増賃金の引上げなど、一見有効にみえる政策も、実はピントがずれている。なぜなら、日本の企業社会で横行しているのは、サービス残業にみられる賃金の踏み倒しだからである。したがって、これらの対策は実は何の有効性もないばかりではなく、現在浮かび上がりつつあるサービス残業問題が再び水面下にもぐりこみかねない。本当の対策は、残業代を払わない経営者に対する厳罰化や制裁金の制度だが、いずれも自民党は消極的である。
 非正規雇用の拡大や働き方の多様化といった社会の変化に、自民党政権の政策は一貫性を著しく欠いており、かつ場当たり的である。
 小泉政権の成立当初、最初に話題になった政策は何だったか、皆さんはご記憶にあるだろうか?「ワークシェアリング」である。
 もちろん、6年間たなざらしにされている。

 失われた10年ののち、歪められた改革政策で格差が拡大し続けているのが今の日本である。「愛国心」から再チャレンジにいたるまで、余計なお世話ばかりで、本質的なところに目を向けられていない。

(3)につづく
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by foresight1974 | 2007-07-24 22:04 | サイレント政治・社会評論

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