拉致問題の「利権」が生み出す、歪んだ言論社会

「拉致問題、NHKに放送命令へ 総務省、明文化の方針」(asahi.com)
 総務省は13日、NHKの短波ラジオ国際放送で、拉致問題を重点的に扱うよう、NHKに対する命令書に明記する方針を固めた。総務相は短波ラジオ国際放送への命令権限を持つが、個別具体的な項目の扱いを求めるのは異例だ。ただ、与野党から慎重論が出ている。




 命令放送とは、放送法33条に定められている。総務大臣が必要な事項を指定して放送を命じることができる。現在、対象となっているのは、NHK国際放送(短波)のみである。
 しかし、命令書の内容によれば、(1)時事(2)国の重要な政策(3)国際問題に関する政府の見解の3項目を示しているだけで、具体的な内容は、放送の自由を尊重する立場からNHKに委ねてきた。
 これが昭和26年以来、延々と続いてきたわけである。

 従来の方針を変更になるわけだが、問題が多い。
 まず、NHKの放送の自由を侵害する、憲法違反の可能性があること。
 第二に、放送法が予定している、総務大臣の裁量権を逸脱する可能性があることだ。
 命令放送の制度について、総務省の発表資料によれば、「我が国の重要な政策や国際問題に関する政府の見解を継続的に発信することにより国際社会における我が国に対する理解を深め、また、在外邦人に対して適時・適切に時事等の情報を提供する」ということであるとする。
 しかし、拉致問題だけを、こうした理由から「特別扱い」で、総務大臣が命令する権限を導けるか疑問である。
 以前にも、要請という形では、00年以降、01年9月の同時多発テロや、03年3月のイラク戦争開始直前など3回、「在外邦人の安全確保のための情報をラジオで提供してほしい」と要請状が出されたという。
 しかし、拉致問題を放送せよ、という命令は、こうした要請を逸脱した強い介入形態である。NHK側の番組編集権を侵害する可能性は十分にある。

 とはいえ、こうした政府の介入の結果に対し、私は悲観的である。
 なぜなら、当のNHKが全く頼りにならないからである。
 かつて、従軍慰安婦の民衆法廷を題材にしたドキュメンタリー番組が改変された問題は、安倍晋三や中川昭一の「恫喝」が問題なのではない。放送の直前に、わざわざ自民党幹部に「ご説明」に伺わなければならない、NHK幹部達の弱腰が問題なのである。
 おそらく、こうした命令放送の実施は事前にNHK幹部と口裏合わせがあるだろう。

 拉致問題は、その悲惨な結末があらかじめ予定された出来レースである。
 しかし、まだ政治家たちは、この被害者たちに利用価値を見出しているようである。
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by foresight1974 | 2006-10-14 17:44 | 表現の自由への長い道距

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