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こんな麻原裁判にしたのは誰か

 地下鉄サリン事件などで殺人罪などに問われ、一審で死刑判決を受けたオウム真理教元代表、松本智津夫被告(麻原彰晃、50)の精神鑑定を進めていた精神科医は20日午前、鑑定結果をまとめた。同日午後に東京高裁(須田賢裁判長)に届けられた。鑑定結果は「訴訟能力は失われていない」という内容で、同高裁はこの結果を尊重し、近く「被告に訴訟能力がある」との結論を下す見通しだ。
日本経済新聞朝刊2006年2月21日


 実に無意味で、何の成果もない出来レースの精神鑑定が終わり、いよいよ弁護団は追い詰められた。
 接見に現われない被告人を待つこと半年以上、38回目で現われた被告人は、自らオムツをはずすこともできない、もはや異常宗教団体の指導者ではなかった。それでも裁判所は、その被告人と打ち合わせをし、控訴趣意書を提出せよというのだ。
 こんな人物に判決を下したところで、いったい誰が救われるというのか?

 一審で組み立てられた詳細な事実認定に基づき、麻原を死刑にするなど、赤子の手をひねるより簡単なことである。
 しかしそれは、人や罪を裁いたことにならない。
 新聞報道や世論で裁判の行方を決めるならば、独立した司法権など必要ない。立憲民主主義など恥ずかしくて口にする資格もない。
 今必要なことは、弁護団を擁護し、鑑定意見を述べる精神科医を世論の圧力から守ることである。それでこそ、「公平な裁判」が実現するのである。

 しかし、肝心のマスコミの中に、実態を知りながら弁護団への誹謗中傷を生き甲斐にする、腐った輩が蔓延っている。
 弁護側立証までの時間稼ぎや控訴趣意書提出までの鑑定要求など、通常の刑事裁判ならいずれも正当な行為として問題にされないこれらの防御行為にことごとくケチをつけ、あたかも「弁護団の不当な裁判引き伸ばしをしている」ように「捏造」報道を繰り返した産経新聞や読売新聞。
 安っぽい正義感で被告人の人権保障という刑事裁判の鉄則を蹂躙した結果は甚大だった。
 一審判決後、日弁連幹部が奔走して受任してもらった弁護士は全員辞任。新たに選任された弁護団も、他に多くの事件を抱えながら、孤独で絶望的な戦いを続けている。

 「裁きの結果」責任を全く問われることのない、正義屋稼業のマスコミ諸氏に問いたい。
 おまえはここまでやって、まだ不満なのかと。
by foresight1974 | 2006-02-21 22:09 | 正義の手続を考える

真理を決定するものは、真理それ自体であり、それは歴史を通して、すなわち人類の長い経験を通して証明せられる。(藤林益三)


by foresight1974