保護責任者遺棄致死罪ではなく殺人罪が適用された児童虐待事件

 埼玉県所沢市のアパートで今年1月、当時3歳の長女を餓死させたとして、殺人罪に問われた母親の判決公判が12日、さいたま地裁であり、中谷雄二郎裁判長は「子供が母親から受けた仕打ちはあまりに残酷で冷酷非道」として懲役12年(求刑・同15年)の実刑判決を言い渡した。(毎日新聞2005年10月12日電子版)




 筆者自身はおかしいことだと考えていたが、こうした児童虐待事件に対し、実務は長らく刑法219条の保護責任者致死罪で立件してきた。
 虐待は傷害などの積極的な加害行為で起きる場合もあるが、消極的な遺棄的行為により被害者が死に至る事例が多く、そのため、他の殺人罪の事案と異なり、殺意や殺害の実行行為性の認定が困難だったからだ。

 こうした判例が増えてきたのは、虐待の立件件数が増加したことにもよる。虐待事件における殺意と実行行為性の立証の経験が積み上げられるようになった、という皮肉な事情も作用しているのだろう。

 今回の事件も、被告人が付き合っていた男性から嫌われることを恐れて虐待にはしった事情を認定しており、そうした外堀から殺人罪の構成要件の立証に成功した。

 昨日も、大阪で17歳の長男を餓死寸前に至る虐待を働いた父親に対し、大阪地裁が殺人未遂罪を適用して懲役14年の実刑を言い渡している。

 いたずらに殺人罪で立件することが好ましいとは思わないが、残忍な事件に対しては厳格な態度で処罰に臨むべきであろう。
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by foresight1974 | 2005-10-12 23:27 | 正義の手続を考える

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