チプラスの「錯乱」は対岸の火事か?

投資上は全くのノーポジションで越週しているので、完全に野次馬根性で眺めているが、ギリシャの債務問題は、今度こそ、今度こそ最大の山場に差し掛かろうとしている。

国民投票の結果に後押しされて、てっきり強気に出ると思われていたギリシャ首相・チプラスは、1週間で結果を反故にするかのような手のひらを返し、反緊縮策の承認の最大の難関と思われていたギリシャ議会での承認に、予想外の圧倒的多数で成功した事で、今までは「無能」のレッテルから「策士」「強か」という評価まで出てくる始末で、世人の心の移ろいやすさにただただ呆れるばかりである。

が、それにしてはチプラスの対応は余りにもちぐはぐではないだろうか。




時系列で事実関係を整理してみると、

6/26 EUからの支援延長案を拒否、翌日未明に国民投票実施を表明。
6/30 ギリシャ政府からEU側の緊縮策の大半を受け入れる旨の書簡が届く。
  ところが翌日、チプラスは国民向けのテレビ演説で緊縮策へのNOを呼びかける。
7/5 国民投票の結果、緊縮策受け入れ反対が多数を占める。
7/6 財務相バルファキスの辞任(事実上の更迭)
7/7 EU財務相会議において書面で示されるはずだったギリシャ再建策が示されず。
7/8 チプラス、EU議会演説で再び緊縮策を批判
7/9 ギリシャ政府、改めて財政再建策を提案。EU側の提案を大筋で受け入れ
7/11 ギリシャ議会が圧倒的賛成多数で受け入れ承認。

と並べてみると、どう読み込んでも一貫性のある意図を持った対応がなされていたとはとても言い難い。むしろ「迷走」、もっといえば「錯乱」していると言った方が適切であろう。

これでは、国民投票の結果を反故にしたチプラスは、わざわざ国民の怒りを買うために国民投票をしたようなものである。債務減免(ヘアカット)の約束を取り付けなければ、急速に政権基盤を弱体化させるリスクが生じるが、そこにはバルファキスと二人でさんざん怒らせてきたドイツの首相メルケルと財務相ショイブレが立ちはだかっている。
つくづく、バルファキスの「ゲーム理論」は稚拙・幼稚だった。
まあ、幼稚な外交戦術というと、日本政府もこれまた人後に落ちないものがあるが。。。

そして、本稿執筆現在(日本時間7/12 17:00)、ドイツ政府が期限付きのギリシャのユーロ離脱案という提案までリークされるに及んで、チプラスはますます追い込まれつつある。ギリシャを孤立させることなく、EU支援の下にギリシャに期限付きの独自通貨と為替レートを設定し、ユーロと何らかの形でペッグすることが出来るならばウルトラCの解決策に思えなくもないが、そのための膨大な手続を考えるとこの提案は現実的とは思えない。ただ、ギリシャが考えているほどEUはギリシャに甘くはない。

(※ところで、「EUがギリシャを“見捨てると”ロシアや中国が入ってくる」、というバカげた報道や解説を目にするが、実にバカげている。軍事的理由からアメリカも西欧諸国もそんなことを許すはずがないことは明白だし、第一、こうした見解はギリシャ人自身の「ヨーロッパへの帰属意識」を過小評価している。彼ら自身がロシアや中国と一緒になりたいと望んではいないことは世論調査からも明らかである。
そして何より、経済制裁で外貨準備高を着実に減らしているロシア、上海株式市場の暴落で自国内の経済安定にリスクが顕在化した中国が、貸倒覚悟で残念すぎる放漫財政のギリシャに金を出す余裕があるとはとても思えない。)

とにかく、チプラス政権が今年1月に成立してからというもの、ギリシャは余りに多くの時間を失い過ぎた。現在議論されている財務上の論点はいずれも「今さら」なものばかりで、そもそも議論の余地のないものばかりですらある。
本来ならば、財政再建とバーターで債務減免と長期的な経済成長実現への資金支援という、建設的議論へ使われるべき時間だった。
ポピュリズム、ナショナリズム、そして非生産的な近隣諸国への反発感情の扇動は、不毛な結果しかもたらさないという、歴史的教訓をまたもや世界にもたらした。
ネトウヨは「そりゃ中国や韓国のことでしょ」と言いたいかもしれないが、世間(世界)は、それを日本に見出すときがいずれ来るだろう。
何しろ、来月は戦後70年目の8月なのだから。

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by foresight1974 | 2015-07-12 17:53 | サイレント政治・社会評論

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