与那国島住民投票 基地反対派はなぜ敗れたか(後編)

「(自衛隊誘致は)産業と考えている」
「配備に伴い町民に50万円ずつ配りたい」
「防衛は国が考えることで、知ったことではない」
(与那国島町長/外間守吉の発言とされる)




(続き)
一連のニュースを追って、驚く(とはいっても今さら感は相当にあるのだが)べきは、冒頭に掲げたように、自衛隊の誘致賛成派の、地域振興に関する、驚くほどの場当たり的、先見性のない発言の数々である。

従って、こうした発言を上回る、地域振興策のビジョンを提示することは「論理的には」さして難しくはなかったはずである。
実際、2005年には台湾との「国境交流特区」構想を打ち出したこともある。(結果として国から却下された)
だが現実的には、目に見える結果となる地域振興策が一朝一夕に出来上がるものではないし、振興策に成功していたとしても、人口減少が進む中、自衛隊誘致という「定住者=固定客」の誘惑に抗しえたかは疑問である。
また、東日本大震災等を契機として、一般市民の自衛隊に対する見方が好意的に変化する中で、誘致賛成派町長がいうところの「迷惑な組織」というイメージを持っていない人々も多い。

そこで、反対派の取るべき戦略は、月並みかつ地道ではあるが、こうした「現実を受け入れる人々」に対する、「想像力への働きかけ」という極めて困難な作業によるほかない。
実は、現実に疑いを持たない人には想像力はそもそも働かないし、働かせる必要を感じていない。
いきなり、「戦争と平和」に関する有事なハナシを持ち出したところで、ピンと来ないのである。

そこで、
補助金漬けの振興策が地域を豊かにするのか。
たかが100名程度の自衛隊員駐屯で、地域経済が活性化するのか。
自衛隊員は本当に「問題を起こさない組織」なのか。
(実際には年間1,000件程度の不祥事が毎年報告されている。)
という「現実から出発した想像」に、順々と働きかけていくという地道で、「戦争と平和に無関係で身近なハナシ」から始めていくしかないのである。

そして、この策が成功する前提がまだある。
それは、「普段から自分で考える」という、民主主義の有権者としての根本的な責務への取り組み(そんなことはこの国で行われていることは絶無であるが)である。これなしに、こうした問題が持ち上がってからいきなり考えろ、という方が無理があるからである。
そうした意味で、普段からの民主主義への働きかけが力不足であったという点で、賛否の勝負はついていたのであろう。

ところで、最後に「戦争と平和」についての話題を1つ。
今年に入り、与那国島に続いて宮古島に陸上自衛隊の警備部隊の配備が計画され、地対空、地対艦ミサイル部隊も含まれるという。政府による「南西諸島防衛強化策」は着実に進展している。
しかしながら、実際には日本独力でこれらの島嶼部を防衛する能力も、戦闘を継続する能力もない。
結局は、アメリカに大きく依存せざるを得ない。
そしてアメリカは、日本への抑止力提供と引き換えに、日米同盟の世界同盟化を要求し、安倍政権はこれまた「嬉々として」応じるようである。

いよいよ自衛隊員が戦死する時代が近づいている。
そして、彼らが戦死するのは、幸か不幸か南西諸島である可能性は極めて低い。

[PR]
by foresight1974 | 2015-05-03 19:45 | 9条問題

Let's think about day-to-day topics.


by foresight1974