竹島問題・日本政府「固有の領土」論の自己欺瞞

三月廿九日 [十年]

日本海内 竹島外一島を版図外と定む

 内務省伺

 竹島所轄の儀に付 島根県より別紙伺出取調候処 該島の儀は元禄五年朝鮮人入島以来 別紙書類に摘採する如く 元禄九年正月 第一号旧政府評議の旨意に依り 二号訳官ヘ達書 三号該国来柬 四号本邦回答及ひ口上書等の如く則元禄十二年に至り夫々往復相済 本邦関係無之相聞候へとも版図の取捨は重大の事件に付 別紙書類相添 為念此段相伺候也

三月十七日 内務

 (朱書)伺の趣 竹島外一島の儀 本邦関係無之儀と可相心得事

三月二十九日
(明治10年/1877年・太政官 竹島外一島版図外指令)





国際司法裁判所に提訴検討=竹島問題で韓国に対抗措置
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120811-00000040-jij-pol

 このニュースには失笑を禁じえない。
 民主党の外交オンチは、治療不能なレベルに達しているようである。

 そもそもは、韓国が付託に応じないことを見越した外交的なアピールのようだが、万が一の事故で韓国が応訴した場合、果たして勝てると本気で思っているのだろうか?
 そしてもう1つ、おそらく忘れているだろうが、それは勝利に値することのなのだろうか。。。?

 あまり知られていないが、実は国際法の世界において、「固有の領土」という概念について、明確な定義は存在しない。
 従って、日本政府が竹島を固有の領土だとして国際司法裁判所に提訴した場合、まずその「固有の領土」という概念を、説得力のある法理論で提示しなければならなくなる。
 ところが、国際法が発達してきたヨーロッパなどでは、歴史的に各国の国境が何度も移り変わってきた。国境は「変更できるもの」であって、日本のように1平方センチメートルだに譲れない、という発想はそもそもない。そこに、「固有の領土」などという概念を説得力を持って提示できるのか、非常に疑わしいと言わざるを得ない。
 政府が主張する「固有の領土」とは一度も外国の領土になったことのない領土だ、という余りにも素朴な主張は、「so what?」と尋ね返されるのがオチだ。その概念が、現在の実効支配に基づく領域のラインを変更する必要を感じさせるような根源的な価値観を、国際法という法理論の世界で提示できるとは、ちょっと考えにくいのである。

 そこで、百歩譲って考えてみるとしよう。
 仮に政府の至極単純な主張が受け入れられたとして、果たして竹島は本当に「固有の領土」だと認められるのか?という問題が立ちはだかる。
 これがまたあやふやな史実に基づいている。
 実は江戸時代、幕府はこの竹島の領有権について当時の李氏朝鮮と折衝し、日本の領土外だと認めていることが分かっている。さらに明治時代になると、時の明治政府では内務省、陸軍、海軍、外務省などいくつもの政府機関が同様の調査を行い、そのいずれもが竹島を「日本の領土外」であるとの結論を下しているのだ。
 上記に掲げた文章はその決定打になるもので、1877年(明治10年)、当時の政府の最高意思決定機関であった太政官が、竹島ほか1島は日本の領土ではないとの指令を下した公式文書である。
 この時点で、「外国の領土に一度もなったことのない日本の領土」という政府の主張は、完全に瓦解してしまう。

 実は、日本政府はこれとは異なる主張をしている。
 日本政府が竹島を「固有の領土」と主張する根拠は、1905年(明治38年)1月に、竹島に利害関係を持つ日本国民からの申請を審査し、「本邦の所属とする」と宣言、竹島を島根県に編入したことを根拠としている。
 が、当時の韓国は1904年の日韓議定書、1905年の第二次日韓協約によって日本の被保護国化しつつあり、日本の措置に政治的な抗議は不可能な状況にあったことが忘れられている。というか、メディアは知っていながらほとんど報道がない。

 つまりはこういうことである。
1、日本政府は竹島が古来からの日本の領土だなどと史実に基づかないあやふやな主張を繰り出せば、「固有の領土論」はたちまち瓦解する。
2、日本政府が主張するように、1905年の島根県編入をもって竹島を日本固有の領土とするならば、「日本は韓国を属国状態に置いて初めて可能な領土編入だった」という史実を白日の下にさらすほいかない。
 それはまるで「レイプした女はオレの女」というようなもので、まともな法律家ならば顰蹙を買うような主張になるだろう。

 ということなのである。
 当時の国際法でいくら合法であったと強弁したところで、21世紀のハーグの国際司法裁判所の裁判官たちが、その主張を機械的に採用するとは、とても考えにくいのである。
 このような状況に立ち至った場合、日本政府は未だに時代錯誤の帝国主義的外交を展開する国とのレッテルを貼られ、国益は回復不可能な致命傷を受けることになるだろう。
 民主党政権はそこまでのリスクを冒してまで提訴が正しいと本気で考えているのだろうか?長期的な視野、歴史的な視野に立って計算がされているとはとても思えないのである。

 もう1つ、忘れられているというか、ほとんど知られていない重大な問題がある。
 そもそも、国際司法裁判所は同様の島嶼の帰属問題において、どのような判断基準を持っているのか?つまり「判例はどうなっているのか?」という問題だ。
 もちろんのことながら、固有の領土などというセンチメンタルな論理は存在しない。
 実は、実効支配の有無と行政上どちらが支配を及ぼすのが適正かという、きわめてプラグマティズムな論理によって判断されているのである。古来からどちらが支配してきたか、という点はあまり重視されておらず、実効支配のみで決定できない場合に補助的な判断基準として機能しているに過ぎないのだ。
 そうしてみると、竹島は江戸時代より、日本と韓国との間で領有権について散発的な紛争状態にあったと考えられ、日本側が領土外として譲歩したこともあった。
 果たして、いざ国際司法裁判所で審理されたとしても、日本政府に竹島における韓国の現在の実効支配を覆せるほどの法的根拠があるかというと、極めて脆いと考えざるを得ない。
 実効支配を継続可能で、付託に応じてもまず敗北はない。
 冷徹な外交認識ならば、韓国政府はどこまでも余裕の態度だと考えるべきだろう。

 結局のところ、イ・ミョンバクも野田佳彦も同じ穴のムジナであって、いずれも低迷している支持率を回復させるための国内向けのパフォーマンスに過ぎない。踊るは政治家、知らぬは両国の国民ばかりなり、というのが悲しい現状である。
 まあせめて、韓国が「暴発」しないおかげで、権威ある国際司法裁判所で、自分の祖国が、強姦魔の開き直りのような主張を繰り出すのを見る恥ずかしさを味あわずに済むだけでも、幸運と思うことにしようか。
 
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by foresight1974 | 2012-08-13 22:41 | 国際法の旅

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